カレッジマネジメント217号
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13リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019が大事です。優れた理事長がオーナーでいる場合には、その見識でうまく運営できたとしても、代替わりもあるだろうし、社会の変化によってその見識ではうまく運営できなくなることもある。そうすると理事会が理事長を選ぶ仕組みもないといけないし、理事を選ぶ仕組みも必要です。司会 大石先生の場合は、理事長と学長を兼務されていらっしゃいますが、組織としてどのように「依って立つもの」を設定されているのでしょうか。大石 われわれのところでは15年計画を作っていますが、最初の第1次5カ年計画を達成できないと、次の10年計画も達成しないんです。大学はすぐには変化するものではなく、打つ手はボディーブローのように効いてくるんです。ですから、企業以上に先を見据えて手を打たないと成果が出るまでに長い時間がかかってしまいます。15年先の計画を立てながらも、15年先だけ見るのではなく、5年間で実施すべきこと全てをKPIとして決定し走るという状況をつくっています。これは理事会で確認をして、大学の各学部長にも共有し、各組織でさらにそれを達成するための活動計画を出してもらい、半年ごとに確認していくというプロセスを運用しています。司会 まさに、組織として経営に向き合うということですね。司会 では最後になりますが、どのようなガバナンスがあればいいのか、あるいはガバナンスをよくするためのポイントとは何か。最後に一言ずついただけますでしょうか。吉武 いいガバナンスがあって、初めていいマネジメントがあると考えています。つまり学長や理事長をきちっと選び、だめな時には退出を促すという、ステークホルダーに向いたガバナンス構造があるということです。その基盤が一つは可視化。コストなり、教員の業績なりが見えるようにしておくことです。そして2点目は職員。マネジメントを能動的に担うのが職員ですから、その意識と能力をどう高めていくかということ。また3点目の話として、学部や学科のなかで教員集団をリードしていく学部長や学科長をいかにして計画的に育成するのかが重要だと思います。北城 自分達の学校を10年先にどうしたいのかという目標の実現に向けて、個人の力だけに依存するのではなく、仕組みとして保証されるようにすべき。優れた人を選び出す役割と、優れた人に権限を与える役割を持つのが理事会ですから、それをきちっと構築することが私学のガバナンスにおいて最も重要な部分でしょう。次に人材育成の仕組みも必要。優れた研究者、優れた教育者であり、そのうえで組織運営ができる人を選び、学科長や学部長、副学長にしながら、訓練の場やチャンスを与えて育てていくことが必要です。これは職員についても同じことで、意識的に将来リーダーとなる職員を育てることに注力すべきでしょう。さらには資金の確保について。戦略を作り地道に積み上げていくことや、基金の運用で大学を支える発想もこれから必要になると思います。大石 われわれのミッションは何なのかということと、それを達成するためのバリューとして何をすべきかについて、全員で明確に共有していくことが最も大事でしょう。また、ほとんどのことを決定する場である理事会の運営をどうすべきかが非常に重要なことだと思っています。大学には色々な決めごと、規定が多いのですが、何ごとも規定どおりで済むなら学長はいらないんです。やはりうまく回していくためには「遊び」の部分が学長の仕事には必要だと思っています。そして権限を持つ以上、そこには「覚悟」が必要です。能力があっても覚悟のない人に権限を持たせても意味がない。覚悟を持った人を、どう見つけていくかということが非常に大事だと思います。(司会)人材を育て組織力を高めること、目指すべき方向を明確にすること、そこに向けた意思決定の場を整えること等、大学でも企業でも共通かつ不可欠な視点だと感じました。本日はありがとうございました。(本誌 金剛寺 千鶴子 撮影 平山 諭)目標を明確化し、実現に向けて人を選び育てる仕組みを構築し、取り組みを可視化する今後の方向性特集 大学改革と新時代のガバナンス

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