カレッジマネジメント217号
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15で33%、短大法人で31%、選挙による選出が大学法人で20%、短大法人で10%となっている。また、理事長と学長が同一人物は、大学法人で22%、短大法人で27%となっている。実際の私立大学はこれらの組み合わせによるものなので、理事長と学長の関係一つとっても、多様なパターンがあることが分かる。筆者は以前、理事長と学長が同一人物か、別人の場合に学長を選挙で選んでいるかで、私大ガバナンスを「理事長・学長兼任型」「学長付託型」「経営・教学分離型」にわけて分析を行った※2。ガバナンス類型の違いは大学の成り立ちの違いの影響が大きく、類型によって抱えている大学運営の課題も異なることが分かっている。図2には、理事定数、評議員定数別の大学法人数を示した。人数に関しては、理事は5名以上、評議員は理事定数の2倍を超える数と定められているだけで、法人によって人数は様々である。特に評議員定数についての差異が大きい。私立学校法では、理事の選出方法として、1号理事(校長、学長及び園長を含む)、2号理事(評議員)、3号理事(寄附行為の定めるところにより選任された者)、評議員の選出方法として、1号評議員(職員評議員)、2号評議員(卒業生評議員)、3号評議員(寄附行為の定めるところにより選任された者)の区分がされているが、その内訳等に関する規定もないため、各法人によってどのような人が理事や評議員になっているのかをみれば、さらに多様な実態が存在している※4。それぞれの大学の成り立ちを配慮した、私大のガバナンスの多様性は望ましい面もあるが、多様であるがゆえに、改革を促進するにせよ、不祥事を抑制するにせよ、一律的な法改正で解決しづらい難しさがある。各大学が抱える課題をみても、教授会の反対でなかなか物事が決められない大学もあれば、理事長であったり、常任理事だったり、個人が絶大な権力を持っているケースもある等、様々である。そうした難しさはあるが、様々な制度改正が行われてきた。表1には近年行われてきた制度改正や議論について、改革を後押しするための議論と不祥事等を抑制するための議論に分けて整理した。整理の区分は恣意的で参考程度のものだが、この20年を見ても、両方の観点から議論と制度改正が行われてきたことが分かる。改革を後押しするための議論は、かなり前から行われており、例えば1995年の中教審答申「大学運営の円滑化について」から学長を中心とする全学体制や学長のリーダーシップの必要性はすでに指摘されてきたが、2004年の私学法改正で、理事会を法定化し、最終意思決定機関とし、評議員会を原則として諮問機関化(寄附行為により議決機関とする余地は残した)することで、役割分担を明確化すると同時に、意思決定のスピードを上げることが期待された。その後、2012年に出された経済同友会「私立大学におけるガバナンス改革」や2014年の中教審「大学のガバナンス改革の推進について(審議まとめ)」では、「教授会に大きく依存するガバナンス構造」が問題視され、2015年の学校教育法改正につながり、学長補佐体制を強化するとともに、教授会の役割が限定化され、それらによって学長がよりリーダーシップを強リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 201905010015020025030035040020人─10─19人5─9人05010015020025060人─50─59人40─49人30─39人20─29人11─19人■ 理事定数別の大学法人数■ 評議員定数別の大学法人数(法人数)(法人数)最大最小最大最小特集 大学改革と新時代のガバナンス図2 理事定数、評議員定数の分布(注)小林2014※3より作成近年の私大ガバナンス制度改革

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