カレッジマネジメント217号
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17リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019カンフットボール部の悪質反則問題や相次ぐ医学部入試不正等、大学のガバナンスが問われるような問題が相次いだことが影響してか、大幅な制度の見直しに至ったといえよう。改革を後押しするための改正は、認証評価結果を踏まえた中期的計画の作成を義務づけたことに象徴される。また、評議員会の機能の充実(中長期計画の策定の際の意見聴取等)も盛り込まれた。不祥事等を牽制する制度改正として、監事の牽制機能の強化(理事の行為の差止請求、理事の業務執行を監査対象等)、役員の職務及び責任に関する規定(善管注意義務、第三者に対する損害賠償責任、役員報酬基準の策定、利益相反行為の対象拡大等)の整備が行われる。また、さらなる情報公開の推進として、財産目録、貸借対照表、収支計算書、事業報告書、役員等名簿、監事監査報告書等の公表等を作成し、文部科学大臣所轄法人は、寄附行為、監査報告書、役員報酬等の支給の基準を公表することになる。また、同時に改正される学校教育法には、認証評価の適否認定と、否の時の文部科学大臣への報告も盛り込まれた。例えば、監事は、大学法人で常勤0.21名、非常勤2.03名、短大法人で常勤0.05名、非常勤2.02名と、多くの法人で非常勤に依存していること、監事の選出は評議員会の同意は必要なものの、理事長が選任することになっており※5、問題が起こりうる大学においてどこまで有効策となりうるかという課題もあるものの、今回の私学法改正で、牽制機能や透明性が大きく強化されることが期待できる。こうした制度改正は、私立大学に一定の影響を与えてきた。2015年の学校教育法改正の影響を事例に確認しておこう。まず学長補佐体制は充実化した。上述の私立学校振興・共済事業団の調査では、平成25年調査で学長補佐体制ありは、大学法人で85%、短大法人で67%だったが、平成30年調査では、大学法人で95%、短大法人で88%と増加した。私学高等教育研究所が2017年に行った調査(以下、私高研調査2017、274校が回答、回答率67.5%)※6では、学校教育法改正で学長補佐体制を見直した大学が全体の36%で、その多くが副学長の配置・増員を行った。学長と教授会の位置づけについては、文部科学省が内部規則等について、チェックリストに基づく総点検・見直しまで徹底して求めたこともあり、私高研調査2017(図3)をみても、法改正を受けて多くの私立大学で学内規則を改定したことが分かる。学長等の教学系役職の選考方法については、学長については25%、副学長は24%、学部長は23%、学科長は17%の大学が、学校教育法改正で見直したと回答している(図4)。それぞれの大学の事情に合わせて学長選考方法を見直しており、必ずしも選挙廃止という選択肢ばかりではなかったようである。日本私立学校振興・共済事業団の調査によると、平成25年調査で学長選挙を行っていた大学法人は36%、短大法人は18%、平成30年調査では大学法人は32%、短大法人は15%となっており、一部の大学では選挙を廃止しているが、全体でいえば、3〜4%程度であり、それほど多いわけではない。様々な改革に関して、主にいつ取り組んだのかを聞いたところ(図5)、学校教育法改正後に取り組んだ大学が多いものとしては、意思決定プロセスの見直し(51%)、企画部やIR組織を整備・強化(50%)、教育の質向上のための教学マネジメント強化(45%)、将来構想、中期計画の策定・改正(33%)となっている。以上の調査結果を見てみると、2015年の学校教育法改正特集 大学改革と新時代のガバナンス学校教育法改正は私大ガバナンスをどう変えたか図3 学長の意思決定権と教授会の位置づけ(注)私学高等教育研究所「私立大学におけるガバナンス及びマネジメントに関する調査」(2017)より作成改正前から教学の最終意思決定権を行使改正後に学内規則を変更し、教学の最終意思決定権を行使改正前は決定機関で改正後に変更改正前から意見を述べる機関51%49%65%35%■ 学長の意思決定権■ 教授会の位置づけ

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