カレッジマネジメント217号
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キャッシュレス決済、仮想通貨、クラウドファンディング等、先端技術を活用したFinTechサービスが生まれ、ビジネスモデルが多様化している。スマートペイメント市場、スマートトレーディング市場、ロボアドバイザー市場といったFinTechによる新たな市場も立ち上がってきた(図1)。「金融機関がこれまで一貫して提供してきた預金、決済、融資等の金融商品を分解し、ベンチャー企業が特定領域に特化したサービスを開発し、提供を始めています。このような形で新しいビジネスが生まれてくるのをアンバンドリング、アンバンドリングされたサービス同士や既存のサービスと組み合わせて再構築し、新たなエコシステムを構築することをリバンドリングといいます」(野村総合研究所・田中氏)。矢野経済研究所の調査・研究によると、FinTech系ベンチャー企業の市場規模推移予測として、2021年度には1兆8,590億円に達する有望な市場であるという。(図2)「10年後にはスマートスピーカーを通じて、資金移動や決済等が自由にできるようになる等決済そのものに大きな変化があるかもしれません。また、仮想通貨については、スーパー等日常での決済手段として加わっている可能性があります。一方、情報インフラについては、セキュリティー面等の課題もありますが、ブロックチェーンを活用した各金融機関同士の情報共有が新たな情報基盤の一つとして活用されるのではないでしょうか。」(矢野経済研究所・山口氏)。FinTechには数学や統計、プログラミングを含めたIT知識だけではなく、新しい領域を開拓するマインドを持った人材が求められる。「FinTechに限りませんが、最近はオープンイノベーションに取り組む企業が増えてきました。特定の学問領域だけでなく、アクティブラーニング的な学びの姿勢を身に付け、新技術やサービスに対する感度を高めることが大事です」(野村総合研究所・田中氏)。「新しい領域を開拓していくためにはITの知見に加え、アントレプレナーシップを持つことが必要です」(矢野経済研究所・山口氏)。10月から消費税が増税される。政府は景気対策の一つとして行うポイント還元に備え、キャッシュレスの決済手段を導入する店舗が増えると田中氏は言う。FinTechによって効率化され、各業界で起こるイノベーションに今後も期待したい。(文・馬場美由紀)技術革新により、産業構造や働き方が劇的に変化することが予想されます。本連載では、領域×Technology=「X Tech(クロス・テック)」に着目し、産業の大きな変化の兆しを捉えていきます。田中大輔氏 株式会社野村総合研究所 ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 プリンシパル山口泰裕氏 株式会社矢野経済研究所 ICT 金融ユニット 上級研究員取材協力#02 FinTech(金融とテクノロジー)アンバンドリングとリバンドリングで進化するFinTechで変わる産業AI・ビッグデータIoTセキュリティ・認証ブロックチェーン【管理する】会計・家計管理【支払う】決済・送金【調達する】貸付・与信【運用する】証券・保険・PFM(Personal Financial Management)・クラウド会計・モバイル決済・モバイル送金・クラウドPOS・仮想通貨・ロボアドバイザー・P2P保険・IoT保険・クラウドファンディング・トランザクションレンディング・ソーシャルレンディング・AI与信サービス基礎技術対象個人法人図1 FinTechの範囲図2 FinTech 市場規模出典:「野村総合研究所ITナビゲーター2019年版 P203」0200,000400,000600,000800,0001,000,0001,200,0001,400,0001,600,0001,800,0002,000,0002021年度2019年度2019年度2018年度2017年度2016年度905,0901,018,4101,491,1901,693,2001,788,6001,859,000矢野経済研究所調べ 注1:FinTech 系ベンチャー企業売上高ベース 注2:2017年度は見込値、2018年度以降は予測値(100万円)

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