カレッジマネジメント217号
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20令和元年5月24日、私立学校法の一部改正を含む「学校教育法等の一部を改正する法律」が公布された。今回の改正は学校法人制度の管理運営制度の改善を図る観点から、役員の職務と責任の明確化、経営力の強化、情報公開の充実、破綻処理手続きの円滑化を内容とするものである。改正事項は多岐にわたり、平成16年の理事会設置の法制化等を内容とする私学法改正以来の大きな法律改正と言えよう。改正法の施行は令和2年4月1日であり、各学校法人においては今年度中に新制度に向けた対応が必要となる。本稿では、法改正の内容を中心に、学校法人のガバナンス機能の強化を巡る動向について概説する。今回の制度改正に至る検討の端緒は「私立大学等の振興に関する検討会議」における議論である。同会議は平成28年4月から検討を開始し、平成29年5月に議論のまとめが出された。この中では、学校法人の公共性・公益性をさらに高め、社会からの信頼とさらなる支援につなげる観点からガバナンスの強化が提言されている。この提言を受ける形で、大学設置・学校法人審議会学校法人分科会の下に設置された学校法人制度改善検討小委員会(以下「小委員会」という。)において制度の細部にわたる検討が行われ、平成31年1月に「学校法人制度の改善方策について」の報告(以下「報告」という。)がとりまとめられた。今回の私立学校法改正は報告において提言された法改正事項を基本とした内容となっている。近年の私学法改正としては、上述の平成16年改正において、理事会の設置等をはじめとして、理事・監事・評議員会の権限・役割分担を明確化することによって、学校法人における管理運営制度の改善を図るとともに、情報公開制度が整備された。また、平成26年の改正では、重大な問題を抱える学校法人への対応として、立入検査や措置命令、役員の解任勧告等の法的措置についての規定の整備が行われた。他方、平成16年の私学法改正以降の動きとして、平成18年に公益法人制度改革、平成27年に医療法人制度改革、平成28年に社会福祉法人制度改革が行われ、いずれも法人のガバナンス強化を図る観点から、評議員会や理事会の制度整備、情報公開の充実が進められてきている。戦後、学校法人制度は、財団法人制度を沿革としつつ、学校教育という高い公共性を有する公教育を担う機関として、学校法人にふさわしいガバナンスを強化し、社会からの信頼を受け得る制度として歩んでいる。学校法人制度においては、私立学校の自主・自律を基本として、所轄庁の指導・監督は抑制的であるべきであり、学校法人内で運営上の諸課題が生じた場合、自らの手で解決していくことが基本である。そのうえで、他の公益的法人制度に係る改革の状況や考え方も参考としながら、わが国の教育に大きな役割を担う私立大学が、今後も社会からの信頼と支援を得て重要な役割を果たし続けるとともに、学生が安心して学べる環境を整備する、こうした観点から今回の私立学校法の改正を含む学校法人制度の改善が図られるべきであるとの認識が小委員会の報告において示されている。法案作成においては、こうした検討の経緯を踏まえ、法改正事項について検討を行い改正に至ったものである。今回の改正法は、大きく4つの事項により構成されている。リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019令和2年(2020年)4月私立学校法改正に向けて改正の概要川村 匡文部科学省高等教育局私学行政課 課長補佐寄稿検討の経緯

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