21①役員の職務と責任の明確化等、②経営力の強化(中期的な計画の作成)、③情報公開の充実、④破綻処理手続きの円滑化である。また、これら全体に関わる規定として、学校法人の責務規定が新設された。以下、具体的な改正内容について述べる。学校法人の責務(24条)今回の改正では、学校法人の責務規定が新設され、学校法人は、自主的にその運営基盤の強化を図るとともに、その設置する私立学校の教育の質の向上及びその運営の透明性の確保を図るよう努めるものとすることとされた。本規定は今回の学校法人制度改善全体の内容も踏まえ、学校法人において運営基盤の強化、教育の質の向上、運営の透明性の確保のための取組が行われるよう規定するものである。これまで私立学校振興助成法では学校法人の責務規定が置かれていたが、私立学校法には規定が置かれておらず、今回の改正により新設となる。役員の職務と責任の明確化等ガバナンスの基本は権限と責任の一致にある。このことを制度上明確化する観点から、特に役員の職務と責任に関する規定を中心に、以下の規定が整備された。一 特別の利益供与の禁止(26条の2)学校法人は、理事、監事、評議員、職員等の関係者に対し特別の利益を与えてはならないものとすること二 学校法人と役員との関係(35条の2)学校法人と役員との関係は、委任に関する規定に従うものとすること(善管注意義務)三 理事会の議事(36条)理事会の議事について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができないものとすること四 監事の職務(37条)1 監事は、理事の業務執行の状況を監査するものとすること2 監事は、学校法人の業務等に関し不正の行為等を発見し、これを報告するために必要があるときは、理事長に対して理事会の招集を請求するものとすること3 監事は、理事会又は評議員会の招集の請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を理事会又は評議員会の日とする理事会又は評議員会の招集の通知が発せられない場合は、理事会又は評議員会を招集することができるものとすること五 競業及び利益相反取引の制限(40条の5)理事は、競業及び利益相反取引をしようとするときは、理事会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならないものとすること六 理事の報告義務(40条の5)理事は、学校法人に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を監事に報告しなければならないものとすること七 監事による理事の行為の差止め(40条の5)監事は、理事が学校法人の目的の範囲外の行為等をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって学校法人に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該理事に対し、当該行為をやめることを請求することができるものとすること八 評議員会の議事(41条)評議員会の議事について特別の利害関係を有する評議員は、議決に加わることができないものとすること九 評議員会からの意見聴取(45条の2)事業に関する中期的な計画及び役員に対する報酬等の支給の基準については、理事長においてあらかじめ評議員会の意見を聞かなければならないものとすること十 役員の学校法人に対する損害賠償責任(44条の2)役員は、その任務を怠ったときは、学校法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負うものとすること十一 役員の第三者に対する損害賠償責任(44条の3)役員は、その職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負うものとすること十二 役員の連帯責任(44条の4)役員が学校法人又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の役員も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とするものとすること中期的な計画の作成(45条の2)学校法人は公教育を担う法人として安定した経営が求められ、特に文部科学大臣所轄法人については、高度人材育成の機関として、求められる教員・施設設備も多く、また、専門分化が進み、専攻により転学が容易ではない状況を踏まえるリクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019特集 大学改革と新時代のガバナンス
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