カレッジマネジメント217号
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22リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019と、中長期的視点に立った計画的な経営が求められる。このため、今回の改正により、文部科学大臣が所轄庁である学校法人は、事業に関する中期的な計画を作成することが義務付けられた。その際、認証評価の結果を踏まえるとともに、評議員会の意見を聴かなければならないこととされている。小委員会の報告においては、中期的な計画の内容及び期間について、教学、人事、施設、財務等に関する事項について盛り込むとともに、原則として5年以上の期間とすることが示されており、今回の法改正を受けて作成する計画においてはこうした対応が求められる。計画の詳細な内容及び期間については、各学校法人の裁量に相当程度委ねられるが、抽象的な目標に留まらず、データやエビデンスに基づく計画とすることが望ましい。各学校法人においては、改正後の私学法に基づく中期的な計画を施行日である令和2年4月1日の時点で作成されている必要があり、今年度中の対応が必要となる。情報公開の充実学校法人の情報公開については、平成16年改正により、財務情報を中心に公開が進められてきた。また、教学に関する情報は平成22年に学校教育法による情報公開が規定されるとともに、私立学校振興助成法に基づき財務書類等の所轄庁への届出が義務付けられている。現在こうした複層的な情報公開の定めは置かれているが、社会からの信頼を高め、その支援を受けるためには、より積極的な情報の提供・発信を行うことが重要である。このため、文部科学大臣所轄の学校法人における情報公開について以下の規定が整備された。一 寄附行為の備置き及び閲覧(33条の2)学校法人は、寄附行為を各事務所に備えて置き、請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならないものとすること二 財産目録等の備付け及び閲覧(47条)1 学校法人は、役員等名簿を作成しなければならないものとすること2 学校法人は、財産目録、貸借対照表、収支計算書、事業報告書、役員等名簿、監査報告書及び役員に対する報酬等の支給の基準(以下「財産目録等」という。)を、作成の日から五年間、各事務所に備えて置き、請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを学校法人学校法人制度の改善方策について(私立学校法改正関係)理事長外部理事外部監事監事(1)役員の職務及び責任の明確化等に関する規定の整備 【第24条、第35条の2、第37条、第42条、第44条の2等関係】 ①学校法人の責務の新設 ②役員の責任の明確化 ③理事・理事会機能の実質化 ④監事の理事に対する牽制機能の強化 ⑤評議員会機能の実質化(2)情報公開の充実 【第33条の2、第47条、第63条の2等関係】    (3)中期的な計画の作成 【第45条の2関係】(4)破綻処理手続きの円滑化 【第50条の4関係】                                        等(1)役員の職務及び責任の明確化等に関する規定の整備①学校法人の責務の新設:運営基盤の強化、教育の質の向上、運営の透明性の確保(24条)②学校法人から役員等に対する特別の利益供与禁止(26条の2)④理事の業務執行状況の監査(37条)④理事の法令違反行為等の差止め(40条の5)⑤中期的な計画・役員報酬基準への意見(42条)④理事会の招集請求権・招集権、評議員会の招集権の付与(不正等の場合)(37条)③特別の利害関係を有する理事の議決権排除(36条)③利益相反取引制限の対象拡大(40条の5)③監事への報告義務(著しい損害を及ぼすおそれのある事実)(40条の5)②法人・第三者への損害賠償責任(44条の2~44条の4)(2)情報公開の充実・寄附行為、役員名簿の一般閲覧(33条の2、47条)・役員報酬基準の作成・閲覧(47条、48条)・【大】財務書類等及び役員報酬基準の一般閲覧及び公表( 47条、63条の2)(3)中期的な計画等の作成・予算、事業計画の作成の義務付け(45条の2)・【大】認証評価の結果を踏まえた事業に関する中期的な計画の作成を義務付け(45条の2)(4)破綻処理手続きの円滑化・解散命令による解散時の所轄庁による清算人選任(50条の4)②善管注意義務(35条の2)【選任】・校長、評議員に加え寄附行為の定めるところにより選任された者が就任・5名以上で組織・1名以上が外部理事・欠格事由あり【選任】  ・評議員会の同意により理事長が選任  ・2名以上必要  ・1名以上が外部監事  ・欠格事由 ・兼任禁止  【理事・理事会への牽制機能】・業務監査 ・財産状況監査・監査報告書の作成・提出・不正行為の報告・(不正等の場合の)評議員会の招集請求・理事会への出席・意見陳述【義務・責任】・忠実義務・利益相反行為規制(代表権のある理事のみ、所轄庁による特別代理人の選任が必要)【選任】 ・職員、卒業生に加え寄附行為の定めるところにより選任された者が就任      ・理事の定数の2倍超で組織【理事・理事会への牽制機能】 ・予算、事業計画、寄附行為変更等に関する意見聴取義務   ・意見陳述・答申・報告請求権 等 理事・理事会評議員会監督改正事項監査意見【大】は大学等を設置する文部科学大臣所轄法人のみ対象

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