カレッジマネジメント217号
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23リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019閲覧に供しなければならないものとすること。ただし、都道府県知事所轄法人の財産目録等(役員等名簿を除く)にあっては、在学者その他の利害関係人から請求があった場合に限り、閲覧に供しなければならないものとすること三 役員に対する報酬等の支給の基準(48条)学校法人は、役員に対する報酬等について、民間事業者の役員の報酬等及び従業員の給与、当該学校法人の経理の状況その他の事情を考慮して、不当に高額なものとならないような支給の基準を定めるとともに、当該報酬等の支給の基準に従って、役員に対する報酬等を支給しなければならないものとすること四 情報の公表(63条の2)文部科学大臣が所轄庁である学校法人は、寄附行為、監査報告書、財産目録等のうち文部科学省令で定める書類及び役員に対する報酬等の支給の基準を公表しなければならないものとすること破綻処理手続きの円滑化(50条の4)現行私学法では、学校法人が法令の規定等に違反し、他の方法により監督の目的を達することができない場合には、当該法人に対して解散命令を発出することができることとされている。この場合、現行法では、当該学校法人の理事が清算人となることとされているが、理事にも問題があり清算人に就任させることが適切ではないことも想定される。このため、学校法人が所轄庁の解散命令により解散したときは、所轄庁は、利害関係人の申立てにより又は職権で、清算人を選任するものとすることとされた。制度改正に加え、小委員会の報告においては、私学団体等が自ら定める自主行動基準である「私立大学版ガバナンス・コード」によりガバナンスの強化を図ることも提言されている。ガバナンス・コードについては、金融庁と東京証券取引所が中心となり、上場企業が守るべき行動規範を示した企業統治の方針である「コーポレートガバナンス・コード」が代表例として挙げられる。コーポレートガバナンス・コードは、その実施を一律に義務付けるものではなく、「コンプライ・オア・エクスプレイン」として、何らかの事由でそれを実施(コンプライ)しない場合は、投資家にその理由を説明(エクスプレイン)することを求めている。学校法人制度の改善においても、私立学校法等の法令に基づくだけではなく、私立学校の自主性・自律性を最大限に発揮し、私学団体等が自ら行動規範を定め、学生や保護者を中心としたステークホルダーに対して積極的に説明責任を果たすとともに、学校法人を運営する者が経営方針や姿勢を自主的に点検し、私立学校の健全な成長の発展につなげていくことの必要性が小委員会の報告において示されている。まずは文部科学大臣所轄法人を中心とした団体において取組を開始することが想定され、その際には・経営と教学の連携・協力の在り方をはじめとする経営の強化・理事会の議決事項の明確化や外部理事の適切な人数等をはじめとする理事会機能の実質化・監事監査体制の充実や監事の選任方法の工夫等を通じた監事機能の実質化・法人の規模に応じた評議員数の配置等を通じた評議員会機能の実質化・事業報告書の記載事項の充実等を通じた情報公開の推進等が盛り込むべき事項として提言されている。今回の私立学校法改正及び私立大学版ガバナンス・コードをはじめとするガバナンス強化の取組は、学校法人制度上の大きな改革であり、制度改正の趣旨を踏まえた運用が各学校法人において行われることが重要と考えている。今後、政省令改正や施行通知、説明会の開催等により周知を図ることとしており、不明な点や質問については積極的に私学行政課までお寄せ頂きたい。また、小委員会の報告では、今後の検討課題として、会計監査人による監査の根拠規定を私立学校振興助成法から私立学校法に移すことや学校法人制度会計基準の改善、情報公開の在り方などが提言されている。さらに、今年度の骨太方針2019では、今後検討される公益法人制度の改革等を踏まえ、学校法人についても制度改正に向けた速やかな検討を行うことが盛り込まれている。社会の要請に応じたガバナンス強化に向け、制度の不断の見直しを図っていくことが求められている。私立大学版ガバナンス・コードの策定の推進学校法人ガバナンスの強化に向けて特集 大学改革と新時代のガバナンス

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