カレッジマネジメント217号
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26リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019れていることにも教学と経営の分担が現れている。しかし、学園全体の経営は、教学と経営は極めて密接な連携のもとで進められている。理事長と各学長は1カ月に3回、4回の面談を行い、日常的な課題を共有し、意識のすり合わせを行うとともに、入試・就職・事故・法務等の気がかり事項や相談事は大学だけで対応するのではなく、法人と協力して解決していくようにしているという。また、各大学・学校の方針をふくめた意思決定は、各大学長・学校長や法人の部長級職員で構成される経営会議(月1〜2回開催)において審議する。テーマによっては、直接担当者から話を聞くためキャンパスに出向いて会議を開く等、法人全体で検討する。そして、経営会議で協議した内容を、外部理事を含めた理事会でさらに審議することとされている。理事会は、理事長と5人の各学長・校長と4人の事務系職員(法人、総務・人事、財務、事業)、外部理事として企業人・弁護士・校友ら17名で構成されている。理事長を中心とした法人と各大学・学校の間だけなく、各大学・学校の間でも情報・状況を共有して連携していくことができるように、意思決定プロセスの工夫がなされているのである。さらに、久禮理事長は、経営の透明性を高めるために、様々な形で、様々な階層の教職員との意見交換・懇談を行っている。図2にある、3大学学長懇談会、部長級職員や女性管理職、若手教職員懇談会等がそれにあたるものである。例えば、事務系役員ボードフリーミーティングは、議事録を取らない不定期の打ち合せである。これは、これまで理事や担当職員が、個別に単体で理事長に報告し、協議する形で事案検討をしていたやり方を見直し、関係する部署の職員を理事長室に集めて検討するようにしたものである。理事長への報告だけでなく、理事長がテーマを示し、関係部署を集めて議論をすることもあるという。個別に理事長と検討するのではなく、声かけをして関係者を集めて話をすることで、担当部署間の横のつながりを作ることを意図して行われている。また、女性管理職懇談会は、企業の社長時代に行っていたものでもあり、女性の視点からの意見は様々な改革に参考になるものであったことから、導入したとされる。これらの様々な部署・階層の教職員の意見を聞く取り組みは、正規の組織図に出てくるものではない。しかし、このような理事長を中心としたインナーコミュニケーションを通じて、学園内の意思疏通が円滑になることが、スピード感のある経営につながるとともに、様々な改革につながっているのである。さらに、各大学で学部長の交替があった時には新しい学部長との懇談を行い、定期的に学科長との懇談も開催しているという。それらの懇談には、各大学の学長にも参加してもらい、現場からの様々な提案や意見を学長とともに聞き、その中から実現できるものは実現していく。若手教職員との懇談会の実施を含め、提案と実現の機会があることを教職員が認識していることも経営の透明性につながっているという。さらに、2年前から始めた「特別推進事業」の活用も、経営の透明性を高める特徴ある取り組みである。これは、年度初めに各大学・学校に割り当てる予算とは別に、法人に特別予算を設定し、それぞれの大学・学校からの特色ある提案に対して、審査に基づいて配分する学内の競争的資金である。各大学・学校が、自らの教育力・研究力を向上させるためのアイデアを出し、法人の経営会議でのプレゼンと審査によって、配分を決定する。昨年度は、12億円程度の規模で実施された。この仕組みは、それまで予備費的に位置付けられていた予算を、教育・研究力を高めるために活用するために作ったものであり、年度予算に計上しにくいが、各大学が戦略的に取り組みたいプロジェクトや新たな取り組みのイニシャルコストとなる初期費用をこの予算で申請してきて図2 学校法人常翔学園の組織理事長予算の活用による教育力・研究力の向上・3大学学長懇談会・事務系役員ボードフリーミーティング・3大学学長室長懇談会・部長懇談会・女性管理職懇談会・若手教職員懇談会・事務系管理職者による将来戦略タスクフォース (JOSHO NEXT CABINET)・梅田キャンパス連絡会常翔啓光学園中学校・高等学校常翔学園中学校・高等学校広島国際大学摂南大学大阪工業大学学園本部担当理事理事長理事会監事評議員会内部監査室経営会議監事室

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