カレッジマネジメント217号
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3218歳人口減少による定員割れに苦しむ私立大学が増加する中、大学の諸活動をどう効果的にマネージし、いかに問題状況の打破(ブレイクスルー)を図っていくのか、各大学の置かれた異なる文脈に応じた個別方略のあり方が問われている。そこでは、各種の取り組みを大学全体としてどう方向づけて適正に機能させるのか、つまりガバナンスが必要になるが、しばしば称揚されるようなトップダウン型ガバナンスが常に成功するわけでもない。とりわけ多様性を特徴とする私立大学セクターのガバナンスは、各大学の多様な来歴や学部構成等によって異なり、単一モデルで対応できるようなものではない。むしろ、個別事例を丁寧に掬い取っていくプロセスから学べることが少なくない。そこで、本稿では、学校法人実践女子学園(以下、実践女子)の事例に迫りたい。後述する通り、実践女子はここ10年でガバナンス改革を進め、多様なステークホルダーを巻き込んだ体制の下で情報開示を推進し、透明性を高めることに努めてきた。即ち、開かれたガバナンスの下で関係者の英知を集めながら教育改革を進めてきた事例と言ってもいい。ガバナンス改革の実際とその成果、そして今後の見通しについて山本章正理事長にお話をうかがった。実践女子は、下田歌子が1899(明治32)年に創立した実践女学校・女子工芸学校に始まる。2019年現在、実践女子大学、実践女子大学短期大学部、実践女子学園中学校高等学校を経営し、そのうち、大学は文学部、生活科学部、人間社会学部の3学部で構成されている。学生生徒数は学園全体で約6400名に上る。実践女子はここ30年ほど東京多摩地区の日野市を拠点に大学・短大教育を展開してきた。しかし、2014年に渋谷キャンパスを開設し、文学部、人間社会学部、そして短期大学部を移転させて以降、都心型女子大学としての社会的認知を高めつつある。2000年代に入って首都圏の少なからぬ大学が郊外キャンパスを都心回帰させ、大学の生き残りを賭けて学生確保や教育整備を進めた。実践女子もそんな時流に乗ったように見えなくもないが、実践女子の場合、やみくもに都心に進出したわけではない。そもそも渋谷は学祖・下田歌子が学園の礎を築いた地だ。渋谷キャンパス開設には原点回帰の意味がある。下田歌子は、女性が顧みられない時代、上流階級だけでなく一般女性を対象とした女子教育の振興に心血を注いだ近代女子教育の先駆者として知られる。実践女子は、そうした学祖の思いを継承し、「女性が社会を変える、世界を変える」を建学の精神に、「品格高雅にして自立自営しうる女性の育成」を大学・短大の教育理念に掲げてきた。渋谷キャンパスは、そうした原点に立ち返りつつ、理念を具現化する場として開設されたものだ。JR渋谷駅に程近い交通至便な場所に地下1階、地上17階の校舎が立つ。繁華な街に立地してはいるが、ガラス張りの開放感あふれる落ち着いた空間が整備されている。女子学生の学びと生活を支援する好適な環境が揃っている。当然、渋谷キャンパス開設は志願者動向に影響を及ぼしリクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019外部人材登用と意思決定プロセス明確化に基づくガバナンス改革山本章正 理事長実践女子学園C A S E3近年の改革でどう変わったか

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