カレッジマネジメント217号
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34リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019ない。実践女子では、ここ10年間で精力的にガバナンス改革が進められてきた。それは、井原徹前理事長の下で推進されたものだ。井原前理事長は、理事長をはじめとする理事候補者の選定や役員報酬について、外部理事を含め検討する「役員候補者推薦会議」(企業における指名委員会や報酬委員会に相当する)を設置する等、健全で開かれたガバナンスの構築を進めたことで知られる。山本理事長自身も、そのプロセスに長く学外理事として関わり、さらにここ2年間は総務・人事・労務や総合企画担当の常務理事として関与してきた経緯がある。2019年4月、これまでの路線を継承しつつ、さらなる学園の発展を期して理事長職を引き継いだ。それでは、実践女子におけるガバナンス上の課題とはどのようなものだったのか。山本理事長によれば、10年前は常任理事会に課題がなかなか上がってこなかったという。しかも、いつ、誰が、どこで何を決めていくのかが必ずしも明確ではなかった。そうした問題に対処すべく、ガバナンス体制の改革が始まった。目指したのは、学園のガバナンスを「オープン」「フェア」「トランスパレント」なものにすることだった。そこで進めたのが積極的な外部人材の登用だ。実践女子の現在のガバナンス構造は図2の通りだが、これを見てもわかるように、評議員会、理事会、監事等を法令に基づいて設置しているのはもちろん、理事会には企業人、学校関係者、弁護士等の外部理事を積極的に登用している。評議員会も2割を外部委員(卒業生除く)が占める。こうして外部に開かれたガバナンス構造を作り、透明性を高めてきた。理事会や評議員会を年7回開催しているのも、やはり透明性の向上が目的だと山本理事長は説明する。外部から人を入れる体制が整備された今、次の課題は、外部の人達にもっと意見を言ってもらう機会を別に作るのか、さらに、例えば卒業生達にどう関与してもらうかだと理事長は語る。企業経験が長い山本理事長の目から見れば、外部の意見を聞くという点では企業のほうが先行していると映る。学園経営においても、学園を今後どう動かしていくのか、あらゆるステージで外部の意見に耳を傾け、外からの客観的な意見を吸収していくことが欠かせないという。ところで、私立大学ガバナンスに関しては、法人と教学の関係が対立的に描かれることが少なくないが、実践女子では比較的円滑に行っていると山本理事長は述べる。図2にある通り、学長が副理事長を、副学長が常務理事を務めていて、教学と法人の連携を促す組織形態がとられている。それは理事の担当制にも表れている。例えば、教学系理事は教育だけを担当するのではなく、学園全体の課ガバナンス改革②意思決定プロセスの明確化と情報共有理事会(年7回)理事長、副理事長(学長)、常務理事(副学長)、常務理事(企画・総務)、常務理事(財務)理事(校長)、理事4名(学部長・短期大学部長)、理事2名(職員)学外理事4名(弁護士、企業人、学校関係、卒業生)常勤監事、非常勤監事常任理事会(毎週)理事長、副理事長(学長)、常務理事(副学長)、常務理事(企画・総務)、常務理事(財務)理事(校長)、理事4名(学部長・短期大学部長)、理事2名(職員)常勤監事、部次長(陪席)部長会(毎週)職員部次長17人評議員会(年7回)大学協議会(月3回)経常的な大学運営に関する事項について審議決定学長、副学長、学部長3名、大学教育研究センター長、学生部長、職員部長3名(学長室部長、学務部長、研究推進室部長)諮問事前審議事前審議付託提案教学に関する「人」「もの」「金」に関する事項短期大学部協議会も同様の位置づけである審議内容、結論(議論のプロセス含め)は、教授会、各部署の会議で共有される審議内容、結論は、学内イントラネットで公開<透明性担保の仕掛け><教学系会議>図2 実践女子学園ガバナンス体制図(2019年4月1日時点)

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