カレッジマネジメント217号
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35リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019題にコミットしてもらう形をとっている。加えて、ここ4年ほどで意思決定プロセスをより明確化し、法人と教学の関係が整理されたことも大きい。図2が示すように、常任理事会が首尾よく機能できるよう、大学協議会や部長会における議論を通して論点整理を行い、議題を上げるようにしているという。大学協議会は、2015年の大学ガバナンス改革を契機に整備された、教学に関する「人・もの・金」や「重要事項」の提案を行う教学側の意思決定機関だ。ただ、そこからの提案は、部次長からなる部長会で全て事前審議を行ったうえで、常任理事会に上げることになっている。もちろん、こうしたプロセスに対して当初は教員側に抵抗感があったそうだが、学園として向かう目標・到達点は同じという考えの下、管理的視点からこうした体制をとっているという。その意味からも、学内の情報流通・共有は不可欠だ。各会議開催後、審議の内容・結果は学内イントラネットを使って公開することになっている。もちろん、教授会にもフィードバックされる。10年前よりも組織内における情報の風通しは良くなったし、ボトムアップで情報が出てくるようになったのではないか。山本理事長はそう見ている。こうしたガバナンス改革は、管理体制や内部統制を整備するという点にとどまらず、成長や競争へのマインドを醸成していくためにも必要だと山本理事長は強調する。理事長自らの経験に基づけば、そうした組織風土は教職員からアイデアや提案が出てくるような環境下で形成されていくからだという。つまり、ガバナンス改革はトップダウンのためというより、むしろボトムアップを効かせるためというわけだ。その意味で、現場を活性化するために、今後は中期計画を策定して各種の取り組みを進める予定だ。まずは、毎年8月上旬に2日間連続・計16時間でかけて開催している「常任理事会夏期集中討議」の場で重要事項を議論することにしている。3~5年を単位にしつつ、毎年、翌年の単年度計画と関連づけながらローリング方式で進めていきたいという。計画策定自体を自己目的化せず、柔軟に時代に即応していくためだと山本理事長は述べる。中期計画の中では、学園の重要指標についてできる限り数値目標を設定していくつもりだが、それと同時に、細かな課題に留まることなく、ここまでの改革の成果を今後の成長につなげていく営為も必要だと理事長は考えている(図3)。といっても、そこに明確な「答え」があるわけではない。学内における本格的な議論はこれからだ。ただ、理事長が見据えるのは、学生生徒の成長だ。学生生徒がどう成長していくのか、組織としてその成長にどうコミットできるのかを起点に据えたいという。実践女子は2019年、創立120周年を迎えた。それは変革期の10年と成長期の10年を画するメルクマールに位置づくものだ。その画期に就任した山本理事長は、グローバル化の推進に向けて、海外協定校との職員交換研修を始める等、次なる成長期を先導すべく取り組みを開始している。ここまでの地道なガバナンス改革が現場で実を結び始めている。そう見ていいだろう。(杉本和弘 東北大学高度教養教育・学生支援機構教授)特集 大学改革と新時代のガバナンス学園の価値成長維持衰退チャレンジする仕事の向き合い方今と同じ仕事の向き合い方成長期の10年変革期の10年これから10年の成長曲線改革成り行き全員参加の改革2019少子化シビアに基盤安定改革120周年創立120周年を機に「変革期」から「成長期」へ図3 実践女子学園が描く成長イメージ

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