カレッジマネジメント217号
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38筆者が理事長を務める学校法人濱名学院(本部:兵庫県尼崎市)と学校法人神戸山手学園(本部:神戸市、理事長 楠見 清、以下「神戸山手学園」)は、2020年4月をもって法人合併することについて合意し、濱名学院が存続法人となり2020年4 月より「学校法人濱名山手学院」としての新しい歩みが始まります。本稿では、その背景の説明と、経緯と概要、さらにはこれからの展望についてご説明します。2018年11月26日に出された本答申では、「各大学におけるマネジメント機能や経営力を強化する取り組みに加え、複数の大学等の人的・物的リソースを効果的に共有すると同時に教育研究機能の強化を図るため、一法人一大学となっている国立大学のあり方の見直し、私立大学における学部単位等での事業譲渡の円滑化、国公私立の枠組みを越えて大学等の連携や機能分担を促進する制度の創設等、定員割れや赤字経営の大学の安易な救済とならないよう配意しつつ、大学等の連携・統合を円滑に進めることができる仕組みや、これらの取り組みを促進するための情報の分析・提供等の支援体制の構築等実効性を高める方策について検討することが必要である」(答申23頁。下線筆者)と、大学の連携・統合の推進に向けての制度改正の方向性を打ち出しました。文科省はこれを受けて、国立大学については名古屋・岐阜両大学を端緒にアンブレラ方式による1法人複数大学化を可能にしました(2019年4月1日公布)。また、私立学校法を一部改正し、学校法人は、設置する私立学校の教育の質の向上及びその運営の透明性の確保(第24条関係)、認証評価の結果を踏まえ、事業に関する中期的な計画を作成しなければならない(第45条の2関係)ということを義務づけようとしています。善し悪しは別として、私学に対するコントロールの強化の方向性は明確です。 “学部譲渡”については、「高等教育の質保証に十分留意しつつ、設置認可の仕組みについては基本的に枠組みを維持しながら、申請に必要な書類の精選等私立大学の学部単位等での事業譲渡の円滑化の方策を検討」(答申24頁。下線筆者)が進み、今年度から既に対応を始めようとしています。これらの対応をみると、私学の経営困難化に対する対策の一環であると理解できます。“学部譲渡”という方式は、経営悪化した大学や学部の円滑な移行を可能にすることで、在学生を守り、大学や学部の再生を可能にしようとした制度改正であるといえるでしょう。立地条件に恵まれない等、厳しい経営環境の私大がいたずらに閉鎖されるのではなく、その地域に存続し、地域社会に必要な人材供給や、地域振興に貢献し続ける可能性を残す新たな選択肢となることが注目されているのでしょう。筆者は今回の件で、答申後2019年1月から文科省に相談にうかがっていますが、今回の対応は何が規制緩和や改正なのかの説明を整理すると以下のようになります。①「学部譲渡」とは設置者変更を、大学単位でしかできなかった行為を学部単位で実施可能にした(その点が規制緩和である)。②学部譲渡は、「教育の質保証」が担保されることが前提であり、教育課程、教員組織、学生、校地・校舎も含め、教育条件の「同一性」が担保されることを条件とした審査の省略である。リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019日本初の学部譲渡による統合、濱名山手学院誕生に向けて2019年3月22日「合併契約書」に調印濱名 篤学校法人濱名学院理事長関西国際大学学長中教審の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」からの制度改正1寄稿

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