カレッジマネジメント217号
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44リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングといった座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあると言えるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索するなか、様々な取り組み事例を積極的に紹介していきたい。今回は、「絵がうまい子が入る大学ではない」「社会の問題を解決するのが美大です」「就職内定率は90%以上」等、美大の常識を次々と覆す東北芸術工科大学で、中山ダイスケ学長にお話をうかがった。東北芸術工科大学が公設民営方式で山形市に開学したのは1992年。当初は、丘の上に不思議な大学ができたとしか思われていなかった、とも伝わる。しかし、それから15年を経た2007年、アーティスト・アートディレクターでもある中山ダイスケ学長がデザイン工学部教授として赴任したとき、チャンスを感じたのは、地元との密着度だった。「この街には、電通・博報堂も、ソニーやサントリーも、有名デザイン事務所もない。だからデザインやアートを勉強した人が、あらゆる街場の事業所に入っていき、高度なデザイン技術やクリエイティブセンスが街に活かされていくのです」。西日本出身で、東京やNYを拠点に活動し、東北には縁のなかった中山学長は、「東北の人って東北が大好き。ここで働きたいって人が本当に多い」と発見する。「東北から出ない人達がこの街場に着地して面白いことをするために、この芸術大学があると、街の人から信頼され期待されている。これは珍しいシーンで、新しいスタイルの美術大学になると思いました」。中山学長が就任した2018年に自ら手がけた大学案内は『超・美大』というコンセプトブック。「美大を超えていこう」というそのコンセプトは、「美大ヒエラルキー」のトップに立つ旧帝国美術大学による「美大教育のフォーマット」から抜け出したことを意味している。「本学には、絵がうまい子が入るのが美大だっていう概念すらありません。『社会の問題をアート・デザインを通じて解決する』それが美大がやることだと考えています」。その一方で旧来の美大教育を評価している部分もある。「座学が多くてときどきフィールドワークがある一般大学と違って、美大はほぼフィールドワークで、それを補足するように座学がある。これは、今一番新しい学び方である『探求型学習』そのものです」。東北芸術工科大学のホームページには、「『想像力』と『創造力』を育み、確かな『就業力』へ」というページタイトルがついている。「就業力」をうたうのもまた、美大を超えている。「昔の美大20東北芸術工科大学社会課題をアート・デザインで解決する「超・美大」を目指して中山ダイスケ 学長(Photo:志鎌康平)地元密着でクリエイティブセンスを生かす美大ではない一般大学が併願校に

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