カレッジマネジメント217号
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45リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019教員というのは、言葉は悪いですが、芸術家やクリエイター崩れの人達。社会をあまり見たことがなく、社会進出の方法を教えられる大人ではなかった」。企業経験のない一般大学の教員にもある程度当てはまりそうだが、就職希望者の少なさを誇らしげに語るような「浮世離れした美学」が、かつての東北芸術工科大(芸工大)を含む美大の特徴だったと中山学長は言う。「それが、僕のようにリアルな社会経験のあるデザイナー等が教員として入ってき始めて、もっとリアルなこと、社会が求めていることをしようと言い出した」。「学ぶと働くをつなぐ」方向へとまず意識が変わってきたというより、社会とつながる教員の増加が、大学全体の行動を変え意識を変えてきたのだ。そんな芸工大だから、もはや教員は「芸術家崩れ」ではいられず、「入口・中身・出口」の3つの任務が課せられる。入口は高校生に対するプロモーション、中身は専門の教育、出口は学生を着実に社会に出すこと。教員採用の時点から「3つのうち何かしかできない人ではなく、野球でいえば内野ならどこでも守れる人を採用する」と明確だ。美大では珍しい「出口」への取り組みが始まる背景には、「入口」でのこんな出来事もあった。オープンキャンパスに来場した高校生に自由回答形式で併願先を尋ねたところ、美大ではなく、東北学院大、山形大、東北福祉大等があがってきたのだ。「東日本・北日本の、僕らがライバルだと思っていなかった一般の大学がライバルいった、具体的なやりとりで、「しないのが当たり前」だった進路指導を、「するのが当たり前」にしていった。「でもそれが大変で。特に芸術学部は、彫刻や油絵などを専門とする教員の抵抗感が最初はなかなか大きかった。『美大で就職率とか言いだしたら終わりだ』『また就活とか言うのか。美大でしょ、ここ』とか。そういう先生達を、『あなた自身、大学教員という職を得て定期的な収入があるから、作家として個展を開けるのでしょう。そのように、何かをしながら芸術を続ける方法を学生に教えてください』と説得して、だんだん意識が変わっていったというのがあります」。同じ時期、キャリアセンターの充実も進んだ。学科コースごとに担当職員が配属され、教職協働でキャリア教育をする体制を作った。「教員1人あたり学生3~4人、僕は多い方で8人か9人ですが、その一人だった。それを見つけたときに、美術部ばかりでなくいろんな学生を呼び込まねば。マーケットは大きいぞと感じました。一般の大学が何をしているかを謙虚に見てみよう、就職率も一般大学並みにしようと」。2009年頃から、社会とのつながりを就職率・進路決定率という数字で可視化する取り組みが始まった。具体的にはまず、月1回だった学科会議を週1回にして、各教員が現場で預かる学生の進路活動状況を報告し合い、名簿を見ながら一人ひとりチェックしていく場にした。2012年頃からは代表教授会も月1回から月2回に増やし、時間の大半を進路指導とキャリアサポート設計に当てた。「何々学科は20人中3人しか先週の就活イベントに出席させていないが、ほかにどんな指導をしているのか」と808590951002018年2017年2016年2015年2014年2013年(%)87.286.492.495.395.997.1※内定率=内定者数÷就職希望者数×100内定率推移4つの力を鍛える教育プロセス伝えるPRESENTATION創るCREATION考えるPLANNING調べるMARKETING①想像力②創造力③社会性 / ④意志就職率・進路決定率という数字で可視化

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