カレッジマネジメント217号
9/54

9リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019そのうえで、使命にふさわしい人を探し、最終的に3名まで絞り込んで、理事会がインタビューを行い候補者を評価します。意向投票はあくまで参考の一つとしながら、理事会が学長を決めるというガバナンスの仕組みです。私学法的には理事会が私学の最終意思決定機関ですから、理事長を選ぶのも理事会、学長を選ぶのも理事会、予算の最終決定するのも理事会です。大石先生の大学はどのように選んでいるんですか?大石 本学は、事務職員も含めて意向投票をしたうえで、最終的には理事会が学長を決める仕組みです。選ばれた候補者が、大学をどのように変えていくのかという意思表明を30分間プレゼンし、それを聞いて投票する仕組みに変えたんですが、理事会で選んでいくことが非常に重要なことだと思います。北城 では、企業のやり方が素晴らしいのかといえば、そうとも断定できません。特に日本では、社長の選び方に関しては企業においてもまだまだ問題があります。法律的には株主総会で取締役を選んで、取締役が社長を選ぶことになっていますが、多くの企業では社長が誰を取締役にするか決めて、株主総会にかけているので、実態としては取締役が社長を選んでいるわけではない。複数の社外取締役を入れ始めて、社外取締役の意向が強く働くようにはなってきていますが、まだ十分ガバナンスが変わってるとはいえない。改革の途中ということです。大石 本学では1年間に1回、学長選考委員会で学長の職務評価が行われるようにしています。学長として何を実行するのかを確約し、それに対して全部数値で評価されます。その結果に×が付けられると、それが理事会に諮られます。そうした仕組みがあるからこそ、周りも学長をしっかり見て、評価をしてくれるのだと思います。司会 外部からの視点というお話がありましたが、時代が大きく変化してくるなかで、高度な意思決定が求められるという点と、それに対する社会の説明責任という点があると思います。2017年の「私立大学等の振興に関する検討会議」の議論においても「学校法人の公共性、公益性をさらに高め、社会からの信頼とさらなる支援につなげる」と透明性あるガバナンスの強化の必要性について言及されていますね。吉武 中教審の答申を、昭和30年代ぐらいのものから読んだことがあります。かつてはガバナンスという言葉ではなく、管理運営という言葉が使われているんですが、その根底にある問題意識はあまり変わってないんです。一方で自由であること、他方できちんと組織的に教文部科学省2017年5月「私立大学等の振興に関する検討会議について」(議論のまとめ)よりCOLUMN①高等教育にふさわしい質の確保・ユニバーサル化に対応した高等教育にふさわしい教育の質の確保のための取組の強化・産業構造や経済社会の急速な変化に対応した教育研究の推進・高度化②私学の多様性・機動性を活かした取組の伸長・私学のダイナミズムを活かした特色ある取組・社会的な要請に的確に対応した教育の提供・グローバル化や社会人の学び直しの推進・自治体や産業界との連携と支援の獲得私立大学に求められる教育研究学校法人の公共性・公益性をさらに高め、社会からの信頼とさらなる支援につなげる・理事会機能の実質化・実効性の確保・評議員会機能の実質化及びチェック機能の充実・監事の牽制機能の実効性確保・分かりやすく開かれた情報公開の推進・大学版「ガバナンス・コード」のような自主的ガイドラインの策定と取組の推進ガバナンスの強化財政基盤の在り方の工夫・見直し、必要な制度改正・規制の緩和外部理事を増やすだけでは変われない改革を進める鍵を握る教員評価外部からの視点と評価特集 大学改革と新時代のガバナンス

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る