カレッジマネジメント218号
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技術革新により、産業構造や働き方が劇的に変化することが予想されます。本連載では、領域×Technology=「X Tech(クロス・テック)」に着目し、産業の大きな変化の兆しを捉えていきます。(注釈) ICT(Information and Communication Technology・情報通信技術) IoT(Internet of Things・モノのインターネット)中川 純一氏 株式会社矢野経済研究所 フードサイエンスユニット 主任研究員三輪 泰史氏 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター エクスパート(農学)取材協力#03 Agritech(農業×IT)自動運転トラクター・ロボット・ドローンの活用でダイバーシティと儲かる農業を実現するAgritechで変わる産業かつて農業大国であった日本が抱える深刻な問題─それは高齢化や後継者不足による農業就業人口の減少である。農林水産省の統計によれば、農業従事者の平均年齢は67歳、65歳以上が占める割合は約68%。1985年には543万人いた農業就業人口は今や168万人にまで減少している。こうした課題に対し、ICTやIoTといった先端技術を活用し、高い生産性を実現するスマート農業が注目されている。「全国で自動運転トラクターや農業用ロボット、農業用ドローンが動き回る状況が見られ、2019年はスマート農業の普及元年として本格的な事業普及フェーズに入っています。内閣府ではSIPという戦略的イノベーション創造プログラムを5カ年計画で実施し、自動運転のトラクターを大手3社が発売する等、その成果が市場に出始めています。また、国や民間企業が持っているデータをより効率的に相互活用することを目的に構築された農業データ連携基盤『WAGRI(ワグリ)』について、農研機構が4月1日から正式に運用を開始しました」(日本総合研究所・三輪泰史氏)。矢野経済研究所の調査によれば、スマート農業市場は、2024年度には387億円に拡大すると予測されている。「農機の無人運転システムや農業用ドローンによる農薬散布サービス、モニタリングサービス等がさらに進化し、AIで最適な栽培方法や作業方法が導き出せるようになっていきます。そうなれば経験が少ない生産者でも収量が安定し、事業収益性が高まる『儲かる』農業を実現することができるでしょう」(矢野経済研究所・中川純一氏)。課題先進地域と言われる地方の農村には、高齢化、買い物難民等の解決すべきテーマが山のようにある。そこにビジネスチャンスを感じたベンチャーの活躍も目立つ。「農業ロボットや自動運転トラクターの操作は効率が良く、一家に1台では持て余してしまう。そこで注目されているのがシェアリングサービスです。農業用ドローンのモニタリングデータの分析・有効活用を行うベンチャーも増えています。トマトの糖度の自動計測機能や、無人で1個ずつ梱包するイチゴの自動収穫等、技術からビジネスに転換する場面ではベンチャーが活躍しています」(三輪氏)。こうした先端技術は産学連携の取り組みから生まれることがほとんどだという。「大学は基礎研究から応用研究まで広く行っているので、スマート農業に応用できる技術が学べますが、短期の成果だけでなく、その先にあるサービスや社会像・未来感を想像し、課題解決を発想する力を身につけることが大学に求められると思います」(三輪氏)。スマート農業の進化によって、農業現場のノウハウの可視化と分析が進み、高齢者や女性でも働きやすい農業現場のダイバーシティが実現していくだろう。 (文・馬場美由紀)2017年度2018年度(見込)2019年度(予測)2020年度(予測)2021年度(予測)2022年度(予測)2023年度(予測)2024年度(予測)12,89014,68817,62940,000(百万円)35,00030,00025,00020,00015,00010,0005,000020,68324,18828,54733,51338,700農業用ロボット農業用ドローンソリューション精密農業経営支援ソリューション販売支援ソリューション栽培支援ソリューションスマート農業の国内市場規模は2024年度に387億円まで拡大すると予測矢野経済研究所調べ注1.事業者売上高ベース注2.市場規模には農業向けPOSシステム、農機・ドローンなどのハードウエアは含まれていない注3.2018年度は見込値、2019年度以降は予測値
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