カレッジマネジメント218号
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49リクルート カレッジマネジメント218 / Sep. - Oct. 2019の日本社会において極めて重要な問題に、日本の各地を支えるコミュニティ・リーダーの育成を以て取り組み始めている。同学部では、実践知を育むフィールドワークが重視されている。というのも、地域が直面している、未だ答えが見つかっていない問題と格闘し、地域に向き合える人を送り出したいからだ。また、ここでも、青学の培ってきたものが生かされている。「国際社会のことも理解でき、そして地方に根付く。そういう人材の育成を目指している」(橋本副学長)。さて、こうした取り組みは教育研究の魅力をさらに高めていくわけだが、その魅力が広く伝わり出している可能性、その兆しは、本特集の調査結果にも見て取ることができる。『学びたい学部・学科がある』が3位に上がってきている(前年度4位)。今年度調査から始まった分野別志願度を見ると、「外国語」で1位のみならず、「教育・保育」及び「人間・心理」でも1位を取っている。その他の文系分野でも軒並み4位以上、理系も7位以上である(いずれも関東エリア、P40〜)。既に良い結果なのだが、上述の通り、あぐらをかくことはない。ますますその魅力が伝わっていくに違いない。ただし、ここでわれわれが誤解してはならないのは、上述の取り組みのいずれもが学内に萌芽が見られたものを掬い上げて始まった、という点だ。「基本は既にあるもの、ありながらも発見されていないものを、見えるようにするというのがわれわれ執行部の思い」だったと田中副学長は言葉を添えてくれた。新たに始まったものは、青学の学生や教職員が積み重ねてきたものを掘り起こし、さらに前進していくための足場を強めるしかけを付け加えたところであり、あくまでも内にあるものを大切にしたアプローチだ。青山学院大学のスクール・モットーである「地の塩、世の光」とは「あなたがたは地の塩である」「あなたがたは世の光である」と主イエス・キリストが弟子に向かって語られたことに基づいている。点した灯りを枡の下ではなく燭台の上に置き、「あなたがたの光を人々の前に輝かせる」こと、つまり、人々に「あなたがたの立派な行いを見せる」ように説かれる。筆者は宗教学者でもクリスチャンでもないが、少し踏み込むことをお許し頂けるなら、青山学院大学の学生、教職員は、集まったその時から「地の塩、世の光」なのだろう。であれば、学生、教職員一人ひとりの取り組みが放った「光」によって浮かび上がったものが、大学のブランドであると捉えたい。青山学院大学が「周囲の人からの評判が良い」(2位、前年度3位)のも、そうした一人ひとりの「光」が人々の前で輝きを増してきた結果ゆえなのかもしれない。青山学院大学の人々は、今までのように国際社会へ、また、これからは日本の各地にも、培ったものを携えて訪れ、きっとそれぞれによき隣人となるのだろう。灯りは燭台の上に置かれている。(立石慎治 国立教育政策研究所高等教育研究部 主任研究官)図表3 青山学院大学 センター利用・一般入学試験志願者数推移(2011~2019)480005000052000540005600058000600006200064000201120122013201420152016201720182019センター利用・一般入試合計地球社会共生学部を新設 全学部日程の試験会場に名古屋・福岡を追加 箱根駅伝初優勝キャンパス再配置 4年間一貫教育開始コミュニティ人間科学部を新設Web出願開始TEAP利用開始UCARO利用開始 全学部日程の試験会場に仙台・岡山を追加全学部日程(一部の学部)において学科間併願が可能に文学部比較芸術学科を開設(年)(人)特集 進学ブランド力調査 2019おわりに─燭台の上で輝く「光」※1青学TV https://aogakutv.jp/

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