カレッジマネジメント218号
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53リクルート カレッジマネジメント218 / Sep. - Oct. 2019が4部体制であり、3分の2決定なのです。とりわけ4部体制になって、改革施策の立案・決定・実行が捗るようになりました」と、芝井敬司学長は語る。学長のリーダーシップを求める一連の政策の中で、法的には学長や教授会の位置づけも変化しているものの、やはり一方でボトムアップを大切にしつつ、他方でスピーディな業務推進を行うという難しい舵取りをされていることが拝察される。学部増で規模拡大を続ける中、一般入試・センター利用入試の志願者は2007年入試で10万人を超えたものの、その後長く8万人台で推移した。2018年から、横ばいだった18歳人口が再度減少を始めることを考えると、うかうかしてはいられない。何とか脱却をと考えた芝井学長は、受験生に対して関西大学からの明確なメッセージを送ることにした。その一つが、マーケティングである。法人全体の広報専門部会と一緒に議論し、“リケジョ(理系女)”で統一して打って出ることにした。各種の広報には“リケジョ”の写真を用い、関西大学がとりわけ理系の女子学生の育成に力を入れていることを高校生に伝えた。将来の社会にイノベーションを起こすには、私学でも一定規模の理系学部が必要であり、そこにもっと多くの女性が広く参画することでブレークスルーを生むに違いないと考えてのことである。これは、大学そのものを強くすることにつながる。もう一つが、学長自らによる高校訪問である。高校によっては、学長が足を運んでくれたということに驚嘆するところも多く、高校や高校生の大学に対する好意的な見方につながるのである。これらが功を奏してか、ここ3年間で志願者は1万860人増加した。関西大学が発信するメッセージはこれにとどまらない。芝井学長は、卒業生や社会人に対してもメッセージを打ち出されている。均質な学力を身につけ学位取得して安定した企業に就職して…といった型にはまることなく、自ら何かを起こす人材を育成したいと長く考えてこられた。こうした思いを2016年開設の梅田キャンパスに集結させた。関西大学起業資金支援制度も2018年に発足させた。この梅田キャンパス・ビルの2階には、スタートアップを考えている人と、それを応援したい人とが気軽に集まり、情報交換や相談ができるスタートアップカフェがあり、コーディネーターが配置されている。既に相談者数は2600名を超え、創業者数は50名に達した。3・4階は会員制の異業種交流サロンであり、会員数は500名を超えた。ここで構築された社会人や卒業生のネットワークは、スタートアップ支援にも活用する。そして6~8階は社会人の学び直しの場であり、大学院レベルの履修証明プログラムや公開講座を提供している。幸いにも、梅田キャンパスで展開されている事業は好調である。これらは、大学に蓄積された知的資源と社会の各種資源の融合による新たな知の創出と見ることができ、今後の社会を変えていく原動力になるかもしれない。学部・学科という従来の枠組みによらない方法、かつ、これまでの18歳人口に限定されない新たな学生マーケットの開拓、その可能性も秘めている。これは、まさしく山岡順太郎の提唱した「学の実化(じつげ)」、即ち、学理と実際の調和を目指すことそのものであり、提唱から100年近くを経てもこの学是が将来の大学の在り方を支えている。(吉田 文 早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授)特集 進学ブランド力調査 2019メッセージを打ち出す大学へ図表3 志願者数の推移60,00065,00070,00075,00080,00085,00090,00095,000100,000105,0002007101,45193,70190,06688,39986,46379,98086,75384,24882,94182,59284,58692,21693,452200820092010201120122013201420152016201720182019(年)(人)
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