カレッジマネジメント218号
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60リクルート カレッジマネジメント218 / Sep. - Oct. 2019本稿では、2020年卒の大卒求人倍率調査(2019年4月24日発表)の結果について紹介し、新卒就職市場について考察してみたい※1。 2020年卒の大卒求人倍率調査(大学生・大学院生対象)は1.83倍と、前年の 1.88倍より0.05ポイント低下した(図表1)。8年ぶりの低下だが、リーマン・ショックの影響で就職市場が冷え込んだ2010年卒以来だと、前年(2019年卒)の1.88倍に次ぐ高水準である。最近日本経済が景気後退期に入ったという指摘もあるが、より中長期的な経済構造に決定されると考えられる新卒採用市場においては、影響は観察できない。企業の採用難は持続するとみてよいだろう。 大卒求人倍率は民間企業の求人総数と、民間企業に就職希望する学生数とのバランスで決まるため、両者の動向についてみておきたい(図表1)。求人数は、前年の81.4万人から80.5万人へと0.9万人減少した。対前年増減率で見ると-1.1%であり、6年ぶりの減少となった。 一方、学生の民間企業就職希望者数は、前年の43.2万人から44.0万人と0.8万人増加した。対前年増減率は+1.7%で、4年連続の増加となった。全体では求人に対して、36.5万人の人員不足となった。続いて従業員規模別に企業を4区分して大卒求人倍率をみてみよう(図表2)。結果従業員規模300人未満企業の倍率が9.91倍から8.62倍と1.29ポイント低下した。また300~999人の企業も1.43倍から1.22倍と0.21ポイント低下した。一方で1000~4999人企業は1.04倍から1.08倍と0.04ポイント上昇し、5000人以上の企業も0.37倍から0.42倍へと0.05ポイント増加した。このように従業員規模が1000以上と未満の企業で求人倍率の傾向は分かれる結果となった。特に300人未満企業の倍率の低下幅が大きかった。背景には新卒採用難を理由に民間企業が新卒求人総数を減少し、中途採用により注力していることが考えられる。中途採用の見通しにおいて、2017年度から2019年度にかけて中途採用が「増える」と回答している企業が「減る」と回答している企業を上回り、また2年連続で増加している(図表3)。またもう一つの背景として、中小企業を志望する学生が増加していることがある。中小企業においても、後述する学生を採用するための様々な施策が、効果を発揮していると思われる。続いて業種別に求人倍率を観察する(図表4)。製造業、サービス・情報業については前年からほぼ横ばいといった状況だ(それぞれ1.97倍、0.43倍)。製造業については、米中貿易摩擦により景況感の悪化等が指摘されているが、新卒の労働需要には、その影響はみ調査目的:2020年3月卒業予定の大学生及び大学院生に対する、全国の民間企業の採用予定数の調査、及び学生の民間企業への就職意向の調査から、大卒者の求人倍率を算出し、新卒採用における求人動向の需給バランスを明らかにする。【企業】調査対象:従業員規模5人以上の全国の民間企業7,200社調査項目:2020年3月卒業予定者の採用予定数調査期間:2019年1月31日~3月7日回収社数:4,413社(回収率61.3%)回収方法:電話・FAXにて回収【学生】調査対象:2020年卒業予定の大学生及び大学院生に対して、リクナビ2020にて調査モニターを募集し、モニターに登録した学生4,301人(内訳:大学生3,440人/大学院生861人)調査項目:第一志望の企業の業界等調査期間:2019年3月1日~3月8日回 収 数:大学生 1,338人(回収率38.9%) 大学院生 397人(回収率46.1%)回収方法:インターネットによって調査の告知、回収を行った大卒求人倍率の定義:民間企業への就職を希望する学生1人に対する、企業の求人状況を算出したもの 求人倍率=求人総数÷民間企業就職希望者数調査概要茂木洋之 リクルートワークス研究所 研究員・アナリスト──大卒求人倍率でみる2020年卒の就職動向リクルート「ワークス大卒求人倍率調査」企業の新卒採用難続く中小企業は採用戦略を新卒採用から中途採用へシフト業種間での倍率格差が縮小大卒求人倍率は1.83倍で依然として高水準
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