カレッジマネジメント218号
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65リクルート カレッジマネジメント218 / Sep. - Oct. 2019援を受け、車両を製作する学生プロジェクト「工学院大学ソーラーチーム」も今年で10年目を迎えます。2017年には学内に「総合研究所ソーラービークル研究センター」を設立し、教員陣が設計や解析など研究面で支援しています。2016年度より制度化した、企業の課題に卒業研究でチャレンジする工学院大学「ISDCプログラム(Industry-Student Direct Collaboration Program)」では、これまでになかった学生と企業との直接的なコラボレーションも実現しました。いずれも、教育機関である以上、研究に学生を介在させることに価値を見いだしています。そして、こうした教育研究における本学のポテンシャルを、論文という従来の形だけではなく、社会に発信し、実際に何に使えるかという提案にまで持っていくのが、これからの大学の一つの仕事だと思います。そこで、研究のシーズを発信する目的で、「研究戦略部」という組織を作り、戦略に基づいて発信した結果が、今回のイノベーション・ジャパン採択数日本一という成果なのです。「工」の精神の発信とグローバル化の同時進行2017年に創立130周年を迎え、創立150周年に向けた長期目標「VISION150」を改定しました。国外では国連のSDGs達成、国内ではソサイエティ5.0など、AIやIoTを社会に介在させ、発展させる役割を工学が握っています。変わりゆく社会に貢献できる人材をいかに育成するか、本学がやらなければいけないことをリストアップして、プログラムを考えていくことになるでしょう。新ビジョンは、建学の精神「社会・産業と最先端の学問を幅広くつなぐ『工』の精神」の発信とグローバル展開。つまり、ドメインの拡大の継続とグローバル化の同時進行です。ドメインの拡大では、2019年の今年、先進工学部に航空理工学専攻と宇宙理工学専攻を新設しました。パイロット不足が世界的な問題となる中で、パイロットたちに話を聞くと、今の航空機は操縦する側からの意見が設計に反映しにくく、またフィードバックしようにも専門知識が不十分ということでした。そこで本学は、既存のパイロット養成とは異なる、工学と操縦技術を兼ね備え、航空機の設計や製造の開発にフィードバックできる“エンジニア・パイロット”を養成し、新時代を切り開きたいと考えています。さらに、宇宙旅行事業に進出する航空会社も出てきました。航空工学と宇宙工学はいずれボーダーレスになる分野と見込まれ、宇宙理工学専攻は、航空・宇宙を指向しつつ多様な産業の発展を的確に捉えて活躍できるイノベーション人材の育成を目指しています。独自の留学プログラムで海外での経験値を高めるグローバル化では、VISION150の改定に伴い、2018年4月より大学名を説明するテキストであるバイライン“KUTE(キュート)-TOKYO”を新たに採用しました。KUTEはKogakuin University of Technology & Engineeringの略です。本学が日本の首都である東京に2つのキャンパスを構え、工学を専攻する大学であることを海外に向けて分かりやすく発信するためで、海外からも好評です。高いレベルの英語力が求められる航空理工学専攻でも“ハイブリッド留学(R)”を活用します。ハイブリッド留学は、2013年度からスタートした本学独自の留学プログラムで、全学で実施中です。得意な英語をさらに伸ばすために工学分野を目指す学生は、そもそもの進学目的が合っていません。むしろ苦手意識さえもつことの多い英語力のハードルを下げ、ホームステイ先に滞在しながら、授業は現地で本学教員による日本語の授業を受けます。まずは海を渡り、異文化に触れ、海外での経験値を上げるのが最大の狙いです。このハイブリッド留学の発展形として、主に大学院生を対象に、2020年から新たに“ディプロマット留学”をスタートします。一人でも多くの大学院生が留学できるように、英語力を米国大学の学部留学レベルに設定し、授業料は従来の3分の1程度に抑えます。若いうちに、専門分野の研究に加えて日本と異なる授業方法などを学ぶことで、アカデミック・ディプロマット(学術の外交官)に育ってくれることを期待しています。「工」の精神、即ち社会・産業と工学は結びついていなければならない。これがパイオニアとしての工学院大学の役割です。私立大学らしい自由な発想とグローバルな視点で、イノベーションを創造できる21世紀に相応しい“開発型技術者”をこれからも育てていきます。
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