カレッジマネジメント218号
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66リクルート カレッジマネジメント218 / Sep. - Oct. 2019大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングといった座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長及び改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索するなか、様々な取り組み事例を積極的に紹介していきたい。今回は、東京、千葉、和歌山で連携病院に隣接するマルチキャンパスを展開し、特に看護学科の学生数(入学定員)で日本最大の東京医療保健大学で、医療現場のニーズに応える多様な専門職教育について、木村哲学長、各学科の教員にお話をうかがった。2005年設立の東京医療保健大学は、現在4学部を擁し、看護学科の入学定員合計490名は看護学科の学生数として日本最大だ。設立時には1学部(医療保健学部)3学科(看護、医療栄養、医療情報)だったが、2010年に東が丘看護学部を新設、2014年には東が丘・立川看護学部に名称変更し定員増、2018年には千葉看護学部と和歌山看護学部を新設と発展してきた。木村哲学長は「全ての学部が地域の中核的な医療機関と連携して設立され、成長してきました」と説明する。大学と病院との関係性は、大学の下に病院が付属する一般的な形とは異なり、地域を代表する既存の総合病院とフラットに連携しているのが特徴だ。「医療は、病院だけでなく、ケアも含めた地域保健の一環として見ていく時代ですので、地域との密接な連携は、地域と医療職養成機関、双方にメリットがあると思います」(木村学長)。東が丘・立川看護学部は、2020年度から「東が丘看護学部」「立川看護学部」の2学部となることが決まっており、東京医療保健大学はそれぞれに特色のある5つの看護学部・学科を持つことになる。医療保健学部は、3学科があることを生かしたチーム医療、多職種コラボレーションの実践演習が特徴。東が丘看護学部(現:東が丘・立川看護学部看護学科臨床看護学コース)は、「tomorrow’s Nurse」をキーワードに、多様な場面で自律的に判断・行動できる実力を持った看護師を目指す。立川看護学部(現:災害看護学コース)は、連携病院が災害医療センターであることを生かして、災害に強い看護師の育成に力を入れる。千葉看護学部のキーワードは「地域包括ケア」。連携する船橋中央病院が、地域医療・地域包括ケアの推進に当たるJCHO(地域医療機能推進機構)の中核病院であることを強みにしている。和歌山看護学部は、日本赤十字社和歌山医療センターに加え、地元自治体の和歌山県・和歌山市のバックアップを得て、地元人を地元地域医療の看護師へと育てる「地学地就」を目指している。「地域医療への貢献につながる学びとして、和歌山で暮らす人の健康と生活について考える『わかやま学』も必修科目です」(木村学長)。21東京医療保健大学医療現場のニーズに応える多様な専門職を養成木村 哲 学長日本最大の定員を持つ看護学科

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