カレッジマネジメント218号
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742018年7月、働き方改革関連法(「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」)が公布、2019年4月、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等に関する法律が施行された。続いて、2020年4月には雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)に関する法律が施行される。雇用主にとっては、新たな義務が課されることになり、これまで以上に細やかな人事労務管理が求められる。他方で、この機会を捉えて、戦略的に組織変革や人事制度改革を行うことで、多様で優れた人材が集まり、存分に能力を発揮することができる環境を作りあげることもできる。日本能率協会「日本企業の経営課題2018調査結果」(2018年10月)によると、今後の経営に影響を及ぼすと思われる要因の中で、「人材採用難」と「人件費高騰」について、9割を超える企業が「影響がある」と回答している。現在の課題についても、「人材の強化」が3位から2位へ、「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」が10位から7位に、それぞれ順位を上げている。人手不足への対応と働き方改革は、業種を超えた最大の経営課題の一つになってきた。大学も例外ではない。費用に占める人件費割合の大きさや個々人の能力・貢献が価値の創出に直結するという点で、むしろ企業以上に経営に占める重要性が高いと言うこともできる。しかも、大学教員、附属学校教員、事務系職員、技術系職員、附属病院の医療従事者など多様な職種があり、企業等とは異なる制度設計・運用面での難しさがある。とりわけ、多くの大学が苦慮しているのは大学教員の勤務管理を巡る問題であろう。自由裁量が大きく、管理者の指揮命令や勤務管理が及びにくい職務実態の中で、法の要請にどう応えるかは難しい課題である。また、同一労働同一賃金も、多様な雇用形態の教職員によって支えられている大学の諸活動の基盤に関わる重要な課題である。これらは人事部門など特定の部署だけで対処すれば済む問題ではない。大学の教育、研究、社会貢献、附属学校、附属病院及び法人経営など活動全般に深く関わり、理事長、理事、学長、副学長、事務局長等のトップマネジメント層及び管理監督的立場にある教職員が、基本的な事柄や問題の本質を十分に理解した上で、組織を挙げて取り組む必要がある。我が国の生産年齢人口は1995年の8716万人をピークに減少を続け、2019年2月1日現在で7528万人となっている。(出典:「人口推計」(総務省統計局))その一方で、労働力人口は2008年の6674万人から2018年は6830万人と直近10年間で156万人増加しているが、内訳をみると25歳〜34歳が234万人減少しているのに対して、65歳以上が309万人増加、男女別では、男性が87万人減少しているのに対して、女性が241 万人増加している。25歳〜34歳の減少は率にして16.8%に達し、この年齢層に対する人材獲得競争の激化を裏付けている。また、女性や高齢者への依存度の高まりが、多様な働き方を求める背景の一つとなっている。大学を強くする「大学経営改革」大学における「働き方改革」の意義と課題を考える吉武博通 公立大学法人首都大学東京 理事リクルート カレッジマネジメント218 / Sep. - Oct. 201983人手不足への対応と働き方改革は業種を超えた課題労働力人口や雇用者の構成が大きく変化

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