カレッジマネジメント218号
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75また、2018年の就業者は6664万人、うち雇用者は5605万人、内訳は正規の雇用者3485万人、非正規の雇用者2120万人であり、雇用者に占める非正規の比率は37.8%に達している。(出典:「労働力調査結果」(総務省統計局))このような中、国は2017年3月「働き方改革実行計画」を決定する。そこには、「一人ひとりの意思や能力、そして置かれた個々の事情に応じて、多様で柔軟な働き方を選択可能とする社会を追求する」ことを目指した社会改革であり、生産性の向上、成果の分配、賃金の上昇、需要の拡大を通した「成長と分配の好循環」を目指す経済改革であるとの考えが示されている。これを受けて、働き方改革関連法が成立し、順次施行されつつある。その要点は以下の通りである。このうちの(1)については、従来の雇用対策法が「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(略称:労働施策総合推進法)」に改正され、同法の規定に基づき、2018年12月に、「労働施策基本方針」が公表されている。「長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等」を目指した労働時間法制の見直しの中で、特筆すべきは残業時間の上限規制である。これまで法律上は上限のなかった残業時間を、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができないとしている。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることができず、月45時間を超えることができるのは年間6カ月までとされた。月45時間は1日当たり2時間程度、月80時間は4時間程度に相当する。大学職員については、管理監督的立場にある上位者がこのことを十分念頭に置きながら、業務指示と勤務管理を行う必要があり、経営レベルでも定期的に全体の状況を掴んでおく必要がある。前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保する勤務間インターバル制度は努力義務だが、長時間労働の是正に有効と考えられる。また、清算期間の上限が1カ月から3カ月に延長されたフレックスタイム制もさらなる普及が期待される。本改正に先立つ2017年1月、厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を公表している。その中では、単に1日何時間働いたかを把握するのではなく、労働日ごとに始業・終業時刻を確認・記録する必要があるとされている。その原則的な方法は、使用者自らの現認もしくはタイムカード・ICカード・パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎とした確認のいずれかであるとしたうえで、自己申告制によらざるを得ない場合は、対象となる労リクルート カレッジマネジメント218 / Sep. - Oct. 2019(1)働き方改革の総合的かつ継続的な推進(施行:2018年7月6日)働き方改革に係る基本的な考え方を明らかにするとともに、国は、改革を総合的かつ継続的に推進するための「基本方針」を定める。(2)長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等(施行:2019年4月1日)①残業時間の上限規制②勤務間インターバル制度の導入促進③年5日の年次有給休暇の取得(企業に義務づけ)④月60時間超の残業の割増賃金率引上げ⑤労働時間の客観的な把握(企業に義務づけ)⑥フレックスタイム制の拡充⑦高度プロフェッショナル制度を創設⑧産業医・産業保健機能の強化(3)雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(施行:2020年4月1日)①不合理な待遇差の禁止ⅰ)パートタイム労働者・有期雇用労働者ⅱ)派遣労働者②労働者に対する待遇に関する説明義務の強化③行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備働き方改革は社会改革であり経済改革である労働時間法制の見直しと労働時間の適正な把握

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