カレッジマネジメント218号
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76リクルート カレッジマネジメント218 / Sep. - Oct. 2019働者及び管理者への十分な説明、必要に応じた実態調査、労働者による適正な申告を阻害する措置の禁止など具体的事項を挙げ、労働時間の実態を正しく把握するための措置を講じるよう求めている。このガイドラインは、労働基準法に定める労働時間、休日、深夜残業等の実効を確保することを目的としたものである。対象となる労働者は労基法41条が定める適用除外者及びみなし労働時間制が適用される労働者を除く全ての者であるが、「本ガイドラインが適用されない労働者についても、健康確保を図る必要があることから、使用者において適正な労働時間管理を行う責務がある」としている。2018年7月公布の新労働安全衛生法はこのことを法律上明記し、健康管理の観点から、裁量労働制の適用者や管理監督者を含め、全ての者の労働時間の状況が客観的な方法その他適切な方法で把握されるよう義務づけている。大学教員の場合、主として研究に従事する者(授業や入試等の教育関連業務の時間が5割に満たない程度の者で、診療業務を行う者を除く)には、労使協定締結を条件に専門業務型裁量労働制が適用されるが、これらの教員についても労働時間管理を行うことが求められている。重要なことは、労働時間管理には労基法の要請に基づくものと安衛法の要請に基づくものがあり、後者は裁量労働制の適用を受ける大学教員にも及ぶこと、加えて、これらの教員に対しても、使用者は深夜労働について割増賃金を支払い、休日・休憩を与える義務があるという点である。裁量労働制はあくまで「所定労働時間労働したものとみなす」制度であり、この点が、労働時間規定の適用除外として新たに創設された高度プロフェッショナル制度と異なる。調査時期は少し遡るが、私学経営研究会「第3回私学教職員の勤務時間管理に関するアンケート調査報告書」(大学・短大約700校に送付、回答数268校、回答率38%、調査期間2017年6月〜7月)によると、専任教員の出勤確認について、最も多いのが「出勤簿に押印(出勤時刻の記入なし)」57.4%で、「タイムカード・ICカード」、「WEB勤怠管理システム」、「出勤簿に押印(出勤時刻の記入あり)」を合計しても32.8%にとどまり、「確認しない」との回答も7.5%ある。退勤については38.8%が「確認しない」と回答している。また、裁量労働制を導入していない大学・短大が76.5%にのぼる一方で、「時間外勤務・休日出勤どちらも三六協定を締結している」との回答は32.5%にとどまっている。国立大学法人と公立大学法人は非公務員への移行を機に、就業規則の制定や労使協定の締結などを行い、主として研究に従事する大学教員には裁量労働制、附属学校教員には変形労働時間制を導入するなど、労働法令に則った制度面の整備を進めてきたが、運用面では多くの課題を抱えている。また、上記の調査結果から窺えるように、私立大学・短大の実情は様々で、法令対応の面で大きなバラツキがあると思われる。前述のガイドライン公表以降、国公私を問わず労働基準監督署による大学への立入調査が増え、是正勧告を受けて改善を急ぐ事例も少なくないようである。労基法をはじめとする労働法令が業務の実情に合わないと思われる部分は、様々な業種や職種に見られる。経済界が裁量労働制の適用拡大やホワイトカラー・エグゼンプションの導入を求めてきたことにもそれなりの理由はある。とりわけ大学教員の意識や業務実態と労基法の考え方の間には大きな隔たりがある。米国はホワイトカラー・エグゼンプションの中の専門職エグゼンプトの一形態として教員を位置づけることで労働時間規制の適用を除外している。我が国においても検討されるべきであろう。その一方で、過酷な環境で働かされている若手教員や任期付教員にも心を配る必要がある。彼ら彼女らのみならず教員全員が労働法制によって労働者として様々な保護を受けているという事実も忘れるべきではない。「教育・研究活動は労働ではなく、大学教員は労働者ではな労基法に基づく時間管理と安衛法に基づく時間管理労基法の考え方と大学教員の業務実態に乖離
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