カレッジマネジメント219号
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23リクルート カレッジマネジメント219 / Nov. - Dec. 2019「アドミッション・ポリシー研究で内発的動機を高める」アドミッション・ポリシーと自分を照らし合わせ、志望校とのマッチングを追求高校進路指導事例 ①旭川東高等学校特集 進路の意思決定を科学する北海道旭川東高校では、15年度から1、2年時の「総合的な学習の時間」で「アドミッション・ポリシー研究(以下AP研究)」の導入している。従来のような「偏差値の高い大学を目指そう」「そのために成績を上げていこう」では踏ん張り切れない、さらに偏差値重視で大学進学した生徒が中退してしまうなど、生徒の気質の変化に着眼して開発した取り組みである。アドミッション・ポリシーは「大学の入学者受け入れ方針」であるとともに、社会における「大学の使命」を謳っている部分がある。AP研究は、志望校のアドミッション・ポリシーをしっかり理解して、「自分のやりたいこと」と「大学の使命」のマッチングを追求していくことで、社会とのつながりを意識させ、志望校とのミスマッチを防ぐことを目的としている。アドミッション・ポリシーを読み込むだけでは、学習習慣などの行動変容に結び付くのは難しい。AP研究では、生徒同士でのグループワークを重視している。1年次では、大学のアドミッション・ポリシーを受け止めようとするスタンスを形成するため、課題となっている3大学のアドミッション・ポリシーを読み、各大学が求めている人物像や、大学の社会的責務などについて意見交換をして理解を深める。2年次では、志望校のアドミッション・ポリシーを自分の中に落とし込んでいくため、自分が志望する大学のアドミッション・ポリシーを調べる。さらに、グループワークを通じ他者からの気づきを得、刺激し合うことでよい学習集団が形成され、志望校への思いをあらたにし、行動変容に繋げていく(図表A)。①偏差値だけではなく、アドミッション・ポリシーを理解することで、生徒の内発的動機に火をつけ納得して進路選択をしてほしい②志望校のアドミッション・ポリシーについて調べ、考え深めることで、新たな気づきを得て具体的な行動変容につなげてほしい取り組みへの思い生徒の気質の変化を受けて、内発的動機を重視した進路指導を導入生徒同士のグループワークなど対話の場を多く持つことで、早期の行動変容を促す成果課題とAP研究を導入した卒業生は、その成果が確実に現れている。「面談で、生徒から志望校のアドミッション・ポリシーについて会話に出ることが増えてきました。当校では以前から全国各地の大学を受験する傾向がありましたが、AP研究によって生徒たちが自ら様々な大学について調べ、以前より全国の大学を視野に入れて志望校選びをするようになっています。偏差値軸ではなく、将来、自分がどうやって社会に貢献できるのか、そのためにはどの学校が自分にあっているのかという観点で、進路を選ぶ生徒も多く見られました」同校のAP研究は他校のモデルケースとなっており、進路指導の一環として導入する高校が全国で次第に増えてきている。本研究の成果にも注目が集まっている。●北海道旭川市/全日制・定時制/普通科/共学/生徒数842人 ●2018年度進路実績(現役)/国公立大学147人、私立大学225人、海外の大学5人、専門学校10人、その他4人。 ●道北随一の進学校は実績だけではなく、「アドミッション・ポリシー研究」「旭東アカデメイア」「学びのフローラ」など、独自の教育方針でも注目を集めている。明確な意思を持ち、より全国に視野を広げて大学を目指す生徒も多く見られました進路指導部花尻健明先生学校プロフィール1年次(10月)2年次(8月)プロローグ(自己探究)大切にしたい「行動原理」を選び理由を書く大切にしたい「価値観」を選び理由を書く1.アドミッション・ポリシーを知る課題の3大学のAPを読み、印象に残ったワードを書き出す自分の志望する2校のAPを読み、心に触れた言葉を書き出す2.人物像を具体化するどんなことができる人材が求められているのか、3大学それぞれ書き、発表するどんなことができる人材が求められているのか、2大学(学部単位)それぞれ書き、発表する3.大学の夢を考える3大学の社会的責務・社会的ニーズは何なのか考えるAPの由来を社会的責務(流行)と建学の精神(不易)の観点で捉え直し、グループワーク4.夢に共感する大学の夢に共感できるか否かについてグループワーク大学の持っている「流行」と「不易」に共感できるか否かについてグループワーク5.自らを省みる自分が目指す将来像を考え、今できることをまとめグループで話し合う共感できると感じた大学が求める人材像に近づくため、何ができるのかグループで話し合う2年次ではより志望校を意識させる内容になっている図表A アドミッション・ポリシー研究ワークシート 活用の流れ

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