カレッジマネジメント219号
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24リクルート カレッジマネジメント219 / Nov. - Dec. 2019栃木県立小山南高校は、進路先とのマッチング指導や志望理由書指導、進路指導部面談など、学年の枠を超えて丁寧な進路指導を行っている進路多様校だ。一方で、2年ほど前から、今後取り組むべき探究学習をどのように実施するのかの検討を開始。「何ができるようになるか」「社会とどう関わりたいのか」という視点で進路選択できるためにはどうすればいいのか試行錯誤を繰り返し、探究学習のテーマを「自らの進路」とすることで、生徒が与えられた課題をより自分事として取り組むことができると確信。自分の考え方だけではなく、他者や社会の視点から、進みたい分野や業界の社会的な意義や課題点、そこへ自分がどのように関わりたいかを考えさせることを最も重視した進路探究学習を設計し、昨年度よりスタートさせた(図表B)。進路探究学習の導入にあたり、これまでの進路行事を大きく変更することは行っていない。2年生3学期の進路部面談は、その時の担任ではなく、3年の担任団と進路指導部教員と受験を想定した面談をする、というように、より丁寧な進路指導を実施している。また志望理由書の指導は2年生と3年生の2回実施。2年生で1度経験することで、3年ではより主体的に取り組ませることが狙いだ。これらの指導は探究学習とのつながりを意識している。探究テーマについて、面談で対話しながら研究を深める過程で、進路希望はさらに具体化され、生徒主導の進路選択につながっていく。また、何のためにこの進路行事に取り組んでいるのか、生徒自身が成長履歴を点ではなく線で自覚できるよう、ポートフォリオを導入。今後、3年間を通して進路行事と探究学習、教科学習を有機的につなげるプログラムへ進化していく予定だ。「探究のテーマ設定を通じ、自らの進路を考える」自分視点に他者視点を加え、社会の課題や実態とつながる進路選択を実現高校進路指導事例 ②小山南高等学校①探究学習のテーマを「自らの進路」とすることで、志望分野に自分が関わる意味を探究し、進路希望が具体化され、自分事として取り組んでほしい②興味分野についての探究を繰り返すことで、今の学校生活で力を入れて取り組みたいことをまとめ、生活面や学習面での行動変容につなげてほしい取り組みへの思い成果課題と進路選択を自分事化させる従来の進路指導を活かし、探究学習とのつながりを意識自分自身の進路への考え方の変化や深化を体験的に学び、これから取り組むべきことを意識できた生徒もいたが、課題も見えてきた。進路探究学習を実施した初年度は、生徒主導で進めることが難しく、教員が教えてしまう場面が多かった。そのため今年は1年3学期からスタートし、まずは与えられたテーマで探究を1プロセス回すという探究の方法論を学ぶステップを取り入れた。それを経て2年生から進路探究を行うことで、自律的・自主的に探究のプロセスを回せるのではないかと期待しているという。「本校が目指したいのは、大学に何人受かったということだけではなく、一人ひとりの生徒がより良い社会の担い手になれること。進路探究を通して、そのための自分自身の在り方を見つめ、これからの高校生活をより良くするためのエネルギーが生み出されることを願っています」●栃木県小山市/全日制/普通科・スポーツ科/共学/生徒数475人 ●2018年度進路実績/大学36人、短大6人、専門学校45人進学、就職60人、その他5人 ●大学、短大、専門学校進学、就職と進路が多様。進学希望者には学力向上のための指導を行う一方で、地元企業への就職にも力を入れ地域活性化に貢献している。その課題解決のために地域とプロチームの関係について学びたいという思いに志望動機が進化。それに向けて今取り組むべきことは学力向上。3これまでの進路探究を経て、将来の社会への関わり方、解決したい課題から大学進学後に学びたいこと、そのための今取り組みたいことをまとめる。3探究しているうちにスポーツと地域の関連に気づき、「プロスポーツチームの社会貢献において、ホームタウンが中心になると地域間の不公平が生じる」という課題を発見。2自分の視点・他者視点・社会視点から「調べてわかったこと」「さらに知りたいこと」のまとめと調査を4回繰り返し、新たな気づきをワークシートに記入。2「スポーツマネジメント・スポーツチームの運営」に興味があるが、就職先のイメージが湧かないため、調べたいことは「就職先のバリエーション」として進路探究をスタート。1大学進学後も“探究心を失わず学び続けている”先輩の体験談をヒントに、今の自分の進路希望とこれから調べたいことを書き出す。1図表B 進路探究ワークシート 活用の流れと記入事例(大学進学者)【活用の流れ】【ある生徒の場合】生徒一人ひとりがより良い社会の担い手になるために進路と社会を近づけていきたい進路指導部神田剛一先生学校プロフィール

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