カレッジマネジメント219号
28/60

28リクルート カレッジマネジメント219 / Nov. - Dec. 2019け」が留学のハードルになっているといえる。図表にはないが子どもを送り出すことになる保護者の意向については、「留学してほしい」24%、「留学してほしいと思わない」36%と回答しており、保護者も「留学してほしいと思わない」の割合が高く、積極的な意向者が少ない。してほしい理由を探ってみると、「グローバル化に対応できる人になってほしい」「視野の広い考え方・働き方をしてほしい」という意見が挙がっている。してほしいと思わない理由としては、「国際情勢が不安定」という保護者として子どもを心配する意見が見られた(出典:高校生と保護者の進路に関する意識調査2017)。●キーワードは 「早期化」と「マッチング重視」まず、「早期化」についてだが、今回の調査でも、志望校決定までの進路選択行動が年々早期化していることが明らかになった。特にオープンキャンパス参加時期は高校2年生が最も多くなり、早くから進学先を意識した行動をとる高校生が増えている。今後もこの動きは加速するのだろうか。進路選択行動時期は様々な影響を受けて変動するが、校種・入試方法・志望順位別に見たときのギャップは顕著である(図表1、20、21)。中でも、入試方法については、今後実施される入試時期の見直しによって、さらなる早期化が起きる可能性は考えられる。総合型選抜・学校推薦型選抜のスケジュールが一般選抜と近くなり、かつ「学力の3要素」を評価する内容に転換が求められており、対策期間が長くなる進路指導が増えることが想定される。実際、取材した高校では「進路面談の時期を前倒しし、受験生への切り替えの早期化を図る」という声が聞かれた。次に、「マッチング重視」。高校生の進学先検討時の重視項目不動の1位は「学びたい学部・学科・コースがあること」であるが、今回は2位の「校風や雰囲気が良いこと」に注目した。その結果、オープンキャンパスで雰囲気を確かめに行き、「キャンパスの雰囲気」が知れたことを評価していることが分かった。また、「アドミッション・ポリシー」の認知と活用を問うたところ、82%認知、80%役立ったとの回答を得た。このように、従来型の偏差値重視に変わって、「自分のやりたいこと」や「学校の理念への共感」を基に進学先を見極める、マッチング重視の進路選択が主流となってくるだろう。●変わる進路指導 「見方や考え方を示す進路指導」へ多くの高校が新学習指導要領への移行を前に「生徒の資質・能力の向上を図る」という視点で様々な取り組みが始まっている。これからは、今まで以上に社会変化が加速度的に訪れ、新しく生まれる職業がある一方で、なくなる職業もあるという、不確実性の増す社会で高校生は生きていくこととなる。本特集では2校の高校進路指導事例を紹介した。2校とも「将来や進学先を示す進路指導」から「見方や考え方を示す進路指導」への転換を強く意識していた。この変化の背景にあるのは探究学習だ。進路に対しても探究を重ねることで、自分自身や他者との関わりへの理解を深め、多様なものの見方や考え方を学ぶ。高校での探究学習の広がりとともに、自分とマッチする志望校選びを大事にする高校生が増えていくのではないか。これからの社会は何が起きるかわからないからこそ、「自分は何ができるようになるか」「社会にどんな貢献ができるか」といった自分の可能性を柔軟に考えられる人材の育成に力を入れている。●高校生を中心とした ステークホルダーに対して タイムリーで丁寧な情報提供を今回の調査を通じて見えてきたのは、進路選択に不安を抱きつつ、学校から発信される情報を早期にかつ丁寧にキャッチし行動している高校生の姿だ。しかしながら、入試改革で求められている多面的・総合的評価の方針を公表している学校は多くない。公表されていても、評価方法や活用方法は検討中といった詳細について触れられておらず、教育改革まっただなかにおいて、高校生はマッチングに足る情報を得られていない状況である。日々新しい情報が飛び交い、高校生はもちろん、高校教員、保護者も混乱している。「早期化」と「マッチング重視」を捉え、求める人材像を明確化して、低学年からタイムリーで丁寧な情報提供が高等教育機関には求められている。入試が変わる今こそ、先行して自学の特色ある教育を打ち出すチャンスではないだろうか。(リクルート進学総研 研究員 池内摩耶)

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る