カレッジマネジメント219号
33/60

33リクルート カレッジマネジメント219 / Nov. - Dec. 2019こうしたアウトプット支援とインプット支援はいずれも順調な成長を遂げている(図表3)。成功の要因は、「情報収集力」と「行動力」に集約されよう。必要を感じたら現場に赴く。海外の事情に対して高くアンテナを張っておく。すぐに企画する。ただ、要因はそれだけではない。「柔軟性」が大きな鍵を握っている。2つの側面から説明しておきたい。第一に、2つの高校生支援「ディスカバ!」に対し、結果を強く求めない。桜美林が手掛ける取り組みは、かなり手間がかかるものだ。にも拘わらず、学長は「結果にはこだわっていない」という。「ディスカバ!」によって優秀で意欲的な層が志願してくれるようになれば、もちろん歓迎する。しかし、学びに関しては、ダイバシティーこそが重要だ。多様な人達に入学してもらいたい。だから高校生に働きかけて、その一部が本学に興味を持ってくれれば、合格点をつけたいとのことだった。高原部長も「プログラム参加者のなかには、本学に工学系や医・薬学系がないにも拘わらず、『ディスカバ!』に参加してくれる高校生もいます。でも、その方が参加者の多様性がより増すので大歓迎です」と笑顔で話す。第二に、学内関係者だけでの実施・運用が難しいと判断したときは、躊躇せず、民間業者など学外関係者の力を借りている。大学の取り組みは、できる限り学内関係者の手でという考え方もあろう。しかし畑山学長は、この点について次のように断言する。「学内だけで何かやろうとすると、どうしても様々な制約がかかってしまう。学内という条件に縛られるより、より完成度の高いプログラムを生み出すことを重視したほうが良いのではないでしょうか。高校生達のためにやっているプログラムなのですから」。今村氏に協力を求めたのも、こうした発想による判断だ。開催するプログラムについては、その内容が学群の教育と重なれば学内の協力を仰ぐが、そうでなければ特に連絡もしないという。100%の内容を提供するためにどう動けばいいのか。誰の力を借りればいいのか。多くの選択肢の中で、ベストの方策を探っている。なぜ、桜美林大学の志願者数が急増しているのか。改めてこの問いを考えれば、強く結果が求められることはないとはいえ、挙げてきた取り組みが功を奏しているのは確かだろう。自分達のことを懸命に考えてくれる大学の姿は、間違いなく高校生達の目に魅力的に映る。桜美林の取り組みは、これからどこに向かうのか。高原部長に尋ねたところ、いくつもの案が返ってきた。セミナーやプログラムの数を増やすだけでなく、地方展開を充実させたい。長期休み期間中の実施にとどまっている現状を改善したい。オンラインの次元で何ができるのかを探ってみたい──。これからも挑戦は続きそうだ。ただ、志願者急増の理由は、もしかしたら「ディスカバ!」以外の部分にシフトしつつあるのかもしれない。「高校の先生方のなかには、どの大学に進学したいか分からない、大学で何がしたいのか分からない生徒に対して、『じゃあ、桜美林に進学したら』とアドバイスしてくださる方もいらっしゃると聞きます。『分からなければ、桜美林』。最高の誉め言葉だと思っています」。畑山学長のこの言葉に変化の兆しが感じられる。先行き不透明な時代である。数年先のことも分からない中で、進路に迷う高校生が出てきても不思議ではないだろう。周りの状況を見ながら、そして色々な人の話を聞きながら自分なりの学びを構築できる学群制の意義は、恐らく導入当初以上に高まっているはずだ。だからこそ志願者数は増加の一途を辿っているのではないか。学長は「結局はディシプリンに返るということを、最近強く感じています。学術の世界で培ってきた方法論は、未知のことに対応するための重要な武器になる。学生達には、ぜひともそれを獲得してほしい」とも話す。緩やかでありながらも、押さえるところは押さえる。大学ならではの学びを大事にしながら、時代の少し先を行く。こうした桜美林の姿勢に関心を持ち、進学を望む高校生はますます増えていくように思われた。(濱中淳子 早稲田大学教授)特集 進路の意思決定を科学する挑戦を支えた柔軟性浸透し始めた学群制の意義

元のページ  ../index.html#33

このブックを見る