カレッジマネジメント219号
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38函館大学は、北海道の道南地域の中心都市であり、わが国有数の国際観光都市である函館市に位置する、入学定員100名の商学部からなる私立大学である。1938(昭和13)年に創設された函館経理学校を淵源に持ち、1965(昭和40)年に4年制大学として創設された。同大学を運営する学校法人野又学園は、函館大学とともに、函館短期大学(食物栄養学科、保育学科)、短期大学附属調理製菓専門学校、函館歯科衛生士専門学校、函館看護専門学校の1つの短期大学、3つの専門学校と2つの大学附属高校を設置し、地域で幅広い人材育成を担っている。函館大学では3年前からオープンキャンパスを学生が企画・運営する方式を取り入れ、学生が中心となり、高校生に大学の情報を発信している。このことは志願者・入学者の増加につながるとともに、学生自身の成長にもつながっているという。これらの取り組みの背景や効果について、野又淳司学長・理事長にお話をうかがった。函館大学は、創設者の示した「報恩感謝」「常識涵養」「実践躬行」の学園訓3カ条を具体的信条として、「知・情・意を高度に、かつ円満に発達させる真の学問追究をすること」を建学の精神に位置づけている。3代目の理事長である野又学長は、建学の理念を「知識・技能・態度のバランスのとれた人格形成を目指している」と集約している。商学部の単科大学である同大学は、商学を構成する法律・経済・会計・流通・経営の5つの領域を学ぶことを基本として、企業経営・市場創造・国際英語の3つのコースを設置している。企業経営コースは経営学・会計学・法学を、市場創造コースはマーケティング・経済学を中心に学ぶことになっており、英語国際コースは英語を学習したいというニーズが高いことから設置された。学生は入学の段階でコースを選択することになっているが、入学後の変更も可能としている。学生のコース選択について野又学長は「入試の段階では国際英語コース志望は多い。しかし、途中でコースを変える学生も少なくない。高校の時に英語が得意だから国際英語コースを選んだとしても、実際にビジネスで英語を活かすには、他の分野の知識も必要だということに気づく。また、高校では法律や経済は学ばないけれど、入学後に学んでみるとそれが面白いということでコースを変える。やってみて気づくこともある。コースを前向きに変えて、大学に入った後に頑張ってもらうための仕組みになっている」と話す。そして、高校生の進路選択については、「法人として、短期大学や専門学校も運営しているなかで、高校生に対して、商学部単科である函館大学に入ることだけが最適な進路とは言えない。オープンキャンパスでは、学問の内容、就職の状況、自分に合っているかどうかを自分自身で見てほしいと伝えている」と言う。一人ひとりの高校生や学生にとって、自分自身の将来の目標や自分に合う進路選択を促すことを重視しているのである。高校生が自分自身の進路を決めるにあたり、大学と直接触れる機会であるオープンキャンパスは、大学にとってもリクルート カレッジマネジメント219 / Nov. - Dec. 2019野又淳司学長・理事長函館大学CASE3「学生を信頼する大学」が高校生に伝わるオープンキャンパス1人の職員の発案から始まった、学生に任せるオープンキャンパス運営

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