カレッジマネジメント219号
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40リクルート カレッジマネジメント219 / Nov. - Dec. 2019は、学生を信じて任せたいと思った人がいたということ。学長として、職員のことを信じているのでその提案を採用し、学生に任せることにした」と導入の経過と背景を話す。そして、「学校選びに学校の雰囲気は大切だと思うが、オープンキャンパスを通じて、そのような信頼関係が、学校の雰囲気として伝わっていればいいし、そういう信頼関係が作れる大学ならここで頑張ろうと思えるようになると良いのではないか。期待されたり、信じてもらうほうが人は伸びる。オープンキャンパスは一つのきっかけではあるが、学生が自分達自身の能力を伸ばしていく活動でもある」と位置づける。学生主体のオープンキャンパスにより、参加者の満足度が高まり、志願者が増えているだけでなく、オープンキャンパスの企画・運営に関わる学生の成長にもつながっており、そして、そのことが大学全体の良い雰囲気につながり、好循環をもたらしているのである。函館大学では、オープンキャンパスを学生の企画・運営に任せただけでなく、学生の主体性を育てるための様々な取り組みを行っている。具体的には、1年生と2年生の必修科目である「商学実習」では、“函館の発展”をテーマとするPBLの授業として、函館の課題や魅力となる資源を見つけ、地域や自治体に様々な提案を行っている。2018年には、学生提案の成果として、函館市内の観光地にある大学のサテライト施設に、ムスリム観光客を対象とした礼拝所を設置した。それまで函館市内では、ムスリム礼拝所は空港内にしかなかったものであるが、マレーシアやインドネシアからの観光客が増加していることや、ムスリム観光客の受け入れ態勢を研究するなかで、学生から発案されたものである。このような取り組みは、北海道知事の視察もあり、メディアでも取り上げられた。具体的な成果と目に見える反応から、学生にとって生きた学びになっている。また、海外での学習についても、以前から行っている姉妹校への留学や語学研修だけでなく、学内で学生を公募して取り組む地域活性化プロジェクトとして、アジアへの商品展開について現地訪問を含めて学ぶ「アジアマーケティング研修」を新設した。これは、国際的な視点で地域の活性化に資する取り組みを提案するものである。そこでは、約30人の学生が、函館のインバウンドの観光客にリピーターとなってもらうために必要なことや、函館市内の宿泊サービスの国際化において求められる工夫等を考えて提案する等に取り組んできた。このように、国際観光都市である函館という特色のある地域の発展や課題解決に、学生が主体的に取り組む仕組みを取り入れているのである。さらに、函館大学では、学生の主体性を伸ばす取り組みとともに、学修成果のアセスメントにも力を入れるようにしてきた。内部評価・外部評価・内部調査を体系的に取り入れている(図表2)。カリキュラムポリシーに基づいて、アセスメントポリシーを定め、そのなかで、教育課程のアセスメントとして、「ルーブリックに基づき、学年ごとに実施する共通課題、および卒業論文により、知識・技能・態度の評価を組織的に行う」としている。その特徴は、授業科目と図表3 共通課題 学年ごとの概要図表2 学修アセスメントの概要図1年生全員に大学の費用負担で新聞購読をさせている。学生は、商学に関連する記事を毎週2記事以上スクラップして年4回提出する。学生の関心が高い記事に関連したテーマと参考文献を学長が指定し、討議を行う(10人・120分、レジュメ事前提出)。商学5分野(法律、経済、会計、マーケティング、経営)の250問(1分野50問)を事前に学生に提示し、そこから50問(1分野10問)を出題して試験を行う。共通課題Ⅰ(1年次)共通課題Ⅱ(2年次)共通課題Ⅲ(3年次)大学教職員が推薦文を書いた50冊の図書から、学生は好きな1冊を選択する。図書の感想をレポートとして事前に提出し、学長との個人面談を行う(15分間)。1年共通課題ⅠSLシート学修行動調査学修行動調査学修行動調査学修行動調査TOEIC BridgeTOEIC BridgeTOEIC TOEIC Bridge国数英テスト日商簿記3級SPIPROG専門科目群ルーブリック討議学長面談中間報告会コモンルーブリックディプロマポリシー共通課題Ⅱ共通課題Ⅲ卒業論文2年3年4年内部試験外部試験内部調査主体性を育てる地域課題解決の取り組み学修成果のアセスメントの取り組み

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