カレッジマネジメント219号
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46リクルート カレッジマネジメント219 / Nov. - Dec. 2019大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングといった座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあると言えるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長及び改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索する中、様々な取り組み事例を積極的に紹介していきたい。今回は、「地方、小規模、新設」という3つの弱点を克服すべく取り組む高崎商科大学で、渕上勇次郎学長、鈴木洋文広報・入試室長にお話をうかがった。商業教育の高大連携「Haul-A(ホール・エー)プロジェクト」の協定校は、北海道から鹿児島まで全国30以上の商業高校に拡大している。間もなく開学20周年を迎える高崎商科大学は、大学としては「新興」に属する。しかしその建学の精神「自主・自立」には、1906年に佐藤裁縫女学校という女性向けの職業学校が創立されて以来の長い歴史がある。渕上勇次郎学長は「創立者の佐藤夕子先生には、女性の自立を促す意図がありました」と語る。「今で言う、就業力のもとになるところでしょうか。自分の力で就職するだけでなく、生涯にわたって自分の未来を拓き、社会・地域の未来も作り出していく、そんな人材の育成が、大学の使命となっています」。1988年に高崎商科短期大学、2001年に高崎商科大学が開学。2017年には、商学部を経営学科と会計学科の2学科に改組して、現在に至っている。大学及び短大の教育理念は、実学重視、人間尊重、未来創造、地域貢献、という4つのキーワードにまとめられている。渕上学長は、学生の就業力育成という観点から「教育の理念と建学の精神をつなぐ根本には、人間性がある」と言う。「社会貢献には、とにかく自分の生存が第一、自分自身の欲求を満たせればいいという個人主義的な考え方ではなく、どんなに厳しい状況でも助け合う人間性が必要。就業力を養成するうえで大事なのは、そういう人間性を培うことです。それがないと、職場に行っても、いじめられたり、かわいがってもらえなかったりする。高崎商大の卒業生は好かれる人材だと言ってもらえる、それが就業力の根幹にあると思います」(渕上学長)。また渕上学長は、消費財・投資財・公共財の3つがセットになっているのが教育であり、3つ全てをとことん追求する大学でなければ、本当の就業力は養成できないと言う。「教育の消費財とされる側面は、学生たちが納得し満足する授業の提供です。学費を払う立場からは、投資財の面が見えます。大学で学ぶことは将来にわたって活躍できる力を身につけるための投資だと。また身につけた力を使って地域や社会に貢献すると考えると、教育には公共財的側面もあると言えます」。22高崎商科大学全国の商業高校と連携した職業会計人養成プログラムで地方の平凡な大学から脱却渕上 勇次郎 学長地方の平凡な大学からの脱却裁縫女学校が起源

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