カレッジマネジメント219号
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48リクルート カレッジマネジメント219 / Nov. - Dec. 2019実は当初、民間の資格予備校と連携して課外プログラムを設定したが、成果が上がらず短期間で断念。その後、県立岐阜商業高校が、大卒レベルとされる日商簿記1級に毎年20人以上合格という成果を上げていることを知った鈴木室長は、岐阜商を訪問してアドバイスを受け、さらには岐阜商が連携していた中央大学経理研究所の小島氏を紹介された経緯があった。Haul-Aがスタートする前年の2012年度には、簿記会計の課外授業を試行した。高大連携前だったので、対象はその年の入学者と在学生。希望を募り、最初の受講者として7、8人が集まって、週に2、3回の授業と、週3回のオンライン授業を並行して行った。すると早速日商簿記1級合格者が2人出た。「11月の試験まで、指導期間はわずか半年ほどでしたが、大きな成果でした」(鈴木室長)。その実績を受けて、全国の商業高校との連携というHaul-Aの構想が固まり、岐阜商を皮切りに協定校も次々と増えていった。「岐阜商で簿記の指導をしていた先生が『うちはやるぞ』と言ってくださったことは大きな後押しでした。スーパー商業高校と名高い岐阜商さんの影響力は強く、ご紹介頂いたところに飛び回って協定校を増やしてきたのです」(鈴木室長)。 プロジェクトの成果として、日商簿記検定1級は毎年15名前後の合格者を出している。2級では、会計学科2年次の資格保有率が75.6%に達し、卒業までにはほとんどが最低2級を取得する見通しだ。公認会計士試験では、2015~2018年度の4年連続で現役学生による合格者を輩出。累積合格者数は4年間で13人となった。さらに、合否だけでなく、Haul-Aによって難関資格の取得時期が早まることの効果も大きいという。「例えば、高校で会計士試験の短答式、大学1年次で論文式に合格したとすると、大学に在籍しながら、アルバイト感覚で監査法人での実務経験が積める。そうすると、4年になる頃に、正式に公認会計士として登録することも可能になる。通常だと、30代とか20代後半とかでないとできなかったものが大学生ででき、早い段階から活躍できます」(鈴木室長)。学生募集にも好影響が出ている。北海道から鹿児島まで全国のHaul-A協定校から、優秀な生徒が入学してくる。協定校以外でも、資格取得を視野に入れた志望者が目立ち始めているという。そうした生徒にとって、高崎商科大学が「地方の、小規模な、新興の」大学であることは、全くマイナスではないのだろう。渕上学長は今後の方向性について「一言で言うと、ブランド大学になりたい」と語る。「今は、高崎商科大学はブランド化していない。というより、大学名自体があまり浸透していない。それで最近はTUC(Takasaki University of Commerce)という名称も使うようにしています。2021年に迎える大学20周年記念の柱として『toTUC計画』も進行中です」。会計学科ではHaul-Aプロジェクト、経営学科では「3.5本の矢プロジェクト」と名付けた産学連携授業を、Adobe、楽天、電通といった世界的な大企業と連携して進めている。「こういうことを徹底的にやるのがブランド化への道だろうと思います。地元の信頼を高めながら、全国的にも注目して頂ける大学を目指す。地元の中堅企業に就職させることは、地元貢献の学校、地域密着として当然ですが、それにとどまらない規模を持つことも、この大学に対する信頼性を醸成するうえで大きいと思います」(渕上学長)。卒業生の活躍が報じられることも、ブランド化の一助となるだろう。2019年4月には、卒業生がJASDAQ上場企業の社長に就任。短大1期生の男性で、学部卒でも大学院卒でもなく、短期大学卒の社長としても話題となった。「教育の成果はすぐには出ないとよく言われますが、すぐの成果も欲しいし、数年たっても欲しい。卒業から30年後に社長というふうに長い時間がかかる場合もありますが、社会で活躍する人材を出していきたい。これから20周年を迎え、その先を考えるとき励みになる、いいニュースだったと思います」(渕上学長)。実績と信頼をベースにブランド構築を目指す日商簿記検定1級、公認会計士現役合格の成果予備校とのWスクールからオリジナルへの転換(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)

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