カレッジマネジメント219号
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55主な構成要素とする」としたうえで、マネジメントとリーダーシップの関係を明らかにしつつ、後者に焦点をあて、大学に求められるリーダーシップについて論じることとする。ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授のジョン・P・コッターは、マネジメントとリーダーシップを相異なるも補完し合う行動体系であり、複雑な状況にうまく対処するのがマネジメントの役割、リーダーシップの役割は変化に対処することとの考えを示し、「方向性の設定」vs.「計画と予算の策定」、「人心の統合」vs.「組織編成と人員配置」、「動機づけ」vs.「統制と問題解決」と、両者を対比させて説明する。いずれも前者がリーダーシップ、後者がマネジメントである。コッターによると、複雑さをマネジメントするために、まず計画と予算を策定し、これらを実現するために組織づくりと人員配置を行い、最後に統制と問題解決によって計画の達成を確実にすることになる。これがマネジメントである。これに対して、リーダーシップは、組織に建設的な改革を起こすために、方向性の設定によりビジョンと戦略を生み出し、コミュニケーションを通して構成員の理解を促し、組織を一つにまとめる。そして様々な障害を乗り越えてビジョンを達成するために、構成員が能力を最大限に発揮できるよう動機づける。マネジメントとリーダーシップに対するコッターの説明は一つの考え方であり、確立された定義や普遍性のある理論ではないが、大学経営の在り方を考えるうえで、有益な視点を与えてくれる。コッターが「行きすぎたマネジメントとリーダーシップの機能不全」と指摘するように、マネジメント機能を充実させればさせるほど、リーダーシップを育む環境が損なわれるという側面があることは否定できない。大学の場合は、教授会自治を中心に運営を行ってきたこともあり、マネジメント自体が総じて未成熟という問題を抱えている。その組織特性にふさわしいマネジメントの確立を進めながら、同時にリーダーシップを発揮できる人材を発掘・育成していかなければならない点に大学改革の難しさがある。本連載では既に、リーダーの特性に着目した研究(特性理論)から行動に着目した研究(行動理論)への発展、さらには組織の置かれた状況によって望ましいリーダーシップは異なるとする条件適合理論等、リーダーシップ理論の大まかな流れを紹介しているが(「リーダーシップの本質を理解し、その育成の在り方を考える」本誌第184号、2014年1月)、現在またはこれからの大学に求められるリーダーシップとは何かについてまでは言及できていない。以下、多様なリーダーシップ理論に共通する要素や特に注目する考え方を取り上げながら、大学におけるリーダーシップの在り方とその育成について考えてみたい。リーダーシップ理論の権威であるウォレン・ベニスは、本物のリーダーにそなわっている資質のなかでも、特に重要なものは、①他者が共感できる意義を見いだし、周囲を巻き込む能力、②自分を明確に表現できる、③誠実さ、④適応力(絶え間のない変化にも素早く、理性的に対処できる)と述べる。その上で、これからのリーダーに求められる要素として、幅広い教養、限りない好奇心、つきることのない熱意、周囲を巻き込む楽天性、仕事仲間やチームに対する信頼、すすんでリスクをとろうとする意志、短期的な利益より長期的な成長を追求する姿勢、卓越することへのこだわり、適応力、共感能力、自分自身であること、誠実さ、ビジョンを挙げる。これらの資質や要素を並べてみると、社会が大学教育に期待し、大学が教育目標に掲げている事柄と重なり合う部分が多い。その一方で、大学は組織自らの問題としてその重要性を理解し、これらを育むことにどれだけ努力してきただろうか。リーダーシップ研究では、リーダーを、⑴自然発生的なリーダー(emergent leader)⑵選挙で選ばれたリーダー(elected leader)⑶任命されたリーダー(appointed leader)に区別して論じることがあるが、これまでの大学は学長リクルート カレッジマネジメント219 / Nov. - Dec. 2019共感、自己表現、巻き込む、適応力

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