カレッジマネジメント219号
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56リクルート カレッジマネジメント219 / Nov. - Dec. 2019や学部長を選挙で選ぶのが一般的であった。選挙で選びながら、学長や学部長に決定を委ねることをせず、教授会による合意形成に拘り続ける。その結果、教員は「雑務」と呼ぶ管理運営業務に追われ、組織自体も柔軟性や適応力を欠いたまま、急速な変化や高度化する諸課題に対処せざるを得なくなったのが、今日の大学の現状ではなかろうか。これらの状況は、リーダーシップの育成に真逆の効果をもたらす可能性もある。合意、規則、手続き、前例が重視される組織で、すすんでリスクをとろうとするだろうか。共感、巻き込む、信頼等、リーダーシップの基礎となる要素が育まれるだろうか。とりわけ「信頼」はリーダーシップを語るうえで欠くことのできない要素である。信頼があるからこそフォロワーはリーダーに喜んでついていくことになる。そして、その信頼は経験の積み重ねによって築き上げられるとされている。スティーブンP.ロビンスは、信頼という概念の根底にある主要な要因は、誠実性、能力、一貫性、忠誠心、開放性の5つであるとし、信頼を築く方法として、開放的である、公正である、感情を言葉に表す、真実を話す、一貫性を示す、約束を果たす、秘密を守る、能力を示す、の8つを挙げている。共通目的を協働して実現する企業のような一般の組織と比べ、大学は協働の機会の少ない組織といえる。教員同士の協働は限られ、教職協働も強調され続けている割には、広がりや深さを増しているとは言い難い。このような状況において信頼を築き上げることは容易でない。職員組織においても、職員間での認識や価値観の隔たり、部署間のセクショナリズムに加え、国立大学の場合は全国異動とプロパー、公立大学の場合は自治体派遣とプロパー等、職員間の立場の違いもある。企業等に比べると協働の密度が低くなりがちであることは否めない。このような状況を克服するためにも、大学は様々なテーマを設定し、プロジェクトチームやタスクフォース等の形で協働の機会を意図的に増やしていく必要がある。会議や手続きに係る業務を大幅に圧縮することで時間は捻出可能と思われる。教員同士や職員同士の協働が必要なことはいうまでもないが、教員と職員の協働は、より大きな成果を生み出し、リーダーシップを育む場としての学習効果も一層高まる可能性がある。職員が教員間の接着剤や円滑剤の役割を果たすこともあるし、その逆もあり得る。また、教員と職員では知識や経験が異なるため、問題を多面的に捉えることでアイディアも生まれ、互いに補い合うことで信頼が蓄積される可能性も高い。大学や学部のビジョン・戦略の策定、学部・学科の新設や改組、国の補助事業への申請、カリキュラム開発、学修成果の可視化、学生支援の充実、キャンパス・デザイン、広報戦略等、テーマはいくらでもある。大学が直面する現実は厳しさを増し、解決すべき課題も多岐にわたり、難度も高まりつつある。トップの役割の重要性が一層増していることは繰り返すまでもないが、トップの力だけで諸問題を克服できる状況ではないことも明らかである。デボラ・アンコーナ等は「今日の世界では、経営者の役割はもはや命令を発し、管理することではなく、企業組織のあらゆるレベルにおいて人々の行動の質を高めたり、調整したりすることなのだ。そして、リーダーがおのれの不完全さを自覚し、長所と短所を併せ持った存在であることを認めた時、初めて自分に足りないスキルを誰かに補ってもらうことができる」と述べ、「分散型リーダーシップ」というモデルを提唱する。そして、それを構成する能力として、①状況認識(企業と従業員が置かれている状況を理解すること)、②人間関係の構築(社内外で人間関係を形成すること)、③ビジョンの策定(説得力あふれる将来像を描くこと)、④創意工夫(ビジョンを実現するための新しい方法を生み出すこと)の4つを挙げる。「信頼」を築き上げるために「協働」を促すリーダーは自身の不完全さを自覚する必要がある
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