カレッジマネジメント219号
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61リクルート カレッジマネジメント219 / Nov. - Dec. 2019いった声も出ていたというが、「フリーアドレス制をいかに運用するか、キャリアのある管理職がやると『オフィスはこうあるべき』という志向に陥りがちだと考え、20代30代の若手職員の自由な発想に全て任せた」と樋口学長は語る。2階と3階も、壁によって完全に分断されることなく、学びのスペースが多様な顔を持ちながら展開されている。教室によっては上のフロアから参加することもできる。オープンスペースの発想は、学長自身が35年前にアメリカ留学中に行った教育実習先で、オープンな場で自由に学ぶ小学生を見て、日本の閉鎖的な教室との違いにインパクトを受けたことも影響しているという。オープンスペースでの授業に対する学生の反応が懸念されたが、「見たり見られたりすることで、逆に良い緊張が生まれ勉強が進む」という声が多い。今後は、教育手法をさらに磨き、この建物で学びへの意欲につながる授業ができているか、自主性・自律性が育まれ、学生が成長しているのかを検証することも必要だと樋口学長は話す。さらに、卒業後のキャリア形成もサポートしていけるようなシステム作りも検討中だという。大学のさらなる挑戦に期待したい。(文/金剛寺 千鶴子)増えるように作られている。1階の教職員が働く場所はフリーアドレス制。教員の個人研究室や職員のセクションごとの執務室もなくし、教職協働での学生支援を目的としたオープンな空間となっている。「全員がノートPCで仕事を行い自由に移動。ペーパーレスを目指し、データはクラウド上にアップしている。教職員がみな一つのフロアにいるので、自然に情報が耳に入るから、わざわざ会議をしなくてもいい」(樋口氏)。良いことづくめのフリーアドレス化だが、実現に向けては、教員からは研究室に所持している本をどうするのかと家具を担当したインターオフィス社のアイデアで、2階の教室では、色やデザインが異なる個性豊かでデザインコンセプトが明確な365種類の椅子が使われている。自習する学生、お茶を飲みながら過ごす学生等、一人で静かに過ごせるスペースが増えた。学生が学び、人と交流し、時間を過ごすことができる様々な場が存在する。ホワイトボードが多く設置され、活発なコミュニケーションを促進する環境となっている。随所に置かれたリンゴ箱を模したオリジナルのボックス。テーブルにしても、椅子にしても、ステージに見立ててその上に立って発表してもいい。階段もオープンな学びの場として活用。
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