カレッジマネジメント220号
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27第1次中長期事業計画と比較して、2020年-2024年の第2次中長期事業計画は、各部署のアクションプランが具体的に記され、より詳細な客観的データを多用した記述になっている。ある意味、より外向けに作成されたと言ってもよい。それは、第1次中長期事業計画が意味を持ったと判断し、その発展型として第2次中長期事業計画を位置付けたからであろう。第2次中長期事業計画のそのような記述が可能になったのは、1つには、メディアの各種大学ランキング指標で国士舘大学が上位に位置付けられ、大学経営に自信が得られたことも関係していよう。例えば、『AERA』の2019年10月21日号では、33の私立大学のうち収益性(ROE)という指標において4位にランクされており、また、『東洋経済オンライン』2018年12月14日号では、2018年卒の公務員就職者数の多い大学200校において15位にランクされている。大学ランキングそのものに対する賛否は様々にあるものの、客観的なデータは他大学と自大学とのベンチマークとしての利用価値はある。また、こうした学外の評価の学内に対する影響力は大きく、学内に対して、中長期事業計画に沿った経営をすることへのお墨付きを周知するには十分であった。第2次中長期事業計画でも2024年までの財務データが記されているが、第1次中長期事業計画と異なり、毎年度の事業活動支出は、当年度の事業活動収入の範囲内で推移することが見通されている。即ち、第1次中長期事業計画のマイナス収支が、第2次中長期事業計画ではプラス収支に反転しているのである。ここには、収入に関して学納金の値上げが大きく働いているし、支出に関しては第1次において50%を大きく超えていた人件費比率を50%未満にまで抑制したことが効いている。人件費とは即ち教職員の給与だが、教育・研究の質を落とさずに人件費を削減することは容易ではない。若手専任教員の積極的採用の一方で、非常勤教員の削減、本務職員の適正配置による削減をすることで、マイナスからプラスへの転換を成し遂げた。たとえ、不都合な情報であっても開示する、国士舘大学の場合、こうした姿勢がプラス収支へと導いたということができよう。ところで、この第1次及び第2次の中長期事業計画は、どのようなメンバーによるどのような組織で策定されたのであろう。2つの中長期事業計画の策定を主導された瀬野 隆常任理事は、「教学と法人が一体となって学園全体としての相乗効果を極大化させるために、既存の会議体、例えば、理事会や学部長会とは切り離し、機動的に動くことができる委員会を置き、そこで議論を取りまとめて決定する、これが計画を策定し、運用するに当たって良かった点です。そうでないと利害の対立ばかりが表面化することになって進まないのです」と語られる。図2は、第2次中長期事業計画を策定するに当たっての組織図だが、国士舘教育総合改革検討委員会と第2次中長期事業計画策定委員会が重要な役割を果たしていることは明瞭に分かる。前者は、全学的な視点に立って今後重点的に取り組む事業や課題を検討して決定し、それを後者が引き受けて、事務局として運用に向けて取りまとめをするという関係にある。従来の役職者は、国士舘教育総合改革リクルート カレッジマネジメント220 / Jan. - Feb. 2020図1 第1次中長期事業計画-20020406080100120人件費比率教育研究経費比率消費支出比率学生生徒等納付金比率基本金組入率補助金比率帰属収支差額比率201420152016201720182019(年度)(%)97.781.399.482.199.584.6102.781.7102.682.9103.982.532.99.02.30.60.5-2.7-2.6-3.97.011.621.710.38.58.17.98.08.05.95.937.736.436.437.537.755.452.453.956.656.057.1財務比率(対帰属収入)特集 中期計画で実現する大学の未来教育・研究の質を落とさずプラス収支へ転換第2次中長期事業計画柔軟で臨機応変な計画により好機を逃さない

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