カレッジマネジメント220号
31/66

31学科体制への移行を通して、伝統的な「工業大学」から、より多様な人材ニーズへの対応力を持つ「工科系総合大学」へと大きく舵を切ることとなったと言っていい。変化の背景にあったのはとりわけ少子化だったと掛下学長は説明する。18歳人口は10年後には15%減少する。福井工大は、入学定員が1学年500名、教員も100名強の小規模大学であり、少子化の影響がとりわけ大きく作用する。しかし同時に、福井工大が所在する地域は、地銀や自治体はもちろん、ニッチな分野で業績を上げる中小企業が多く存在する所でもある。少子化が進行する中でそんな地域ニーズに応えられる教育研究体制を構築すべく学部改組が実施され、その結果、福井工大は文系指向の生徒や女子生徒からも選ばれる大学へと変容しつつある。こうした福井工大の変化は実際のデータでも確認可能だ。図2に見るように、福井工大は2000年代後半から2010年代前半にかけて志願者数が低迷し、その結果入学定員割れに苦しんだ経験を持つ。この苦難の期間に入学定員の調整も行われ、617名だった定員は2009年度には530名に、530名だった定員は2010年度には510名に、そして2012年度からは500名まで削減されている。そんな縮減状況にただ手をこまぬいていたわけではない。デザイン学科(2009年度)や産業ビジネス学科(2011年度)の設置がなされているし、センター試験利用やインターネット出願導入といった、志願者に訴求する新たな入試戦略も展開されている。そうした取り組みが奏功し、状況が好転し始めたのは2013年度入試からだ。さらに2015年度には前述の3学部8学科体制へと踏み切った。結果的に、現在まで11年連続で志願者数が増加し、2013年度以降の過去7年ほどは定員割れを起こしていない。2019年度入試では4,062人の志願者を集め、志願倍率も約8倍を確保できるようになった。加えて、出口においても高い就職率を誇り、2018年度には99.6%を達成していると掛下学長は胸を張る。確かに、図2からは2008年度入試を底とするV字回復と近年の安定基調を読み取ることが可能だ。それは、定員確リクルート カレッジマネジメント220 / Jan. - Feb. 20204,5006504,0003,5003,0002,5002,0001,5001,0005005234613794074934525436245726075875796124642006年度※年度は入試年度志願者数入学者数2007年度2008年度2009年度2010年度2011年度2012年度2013年度2014年度2015年度2016年度2017年度2018年度2019年度0600550500450400350300第1次中期経営計画第2次中期経営計画7338088949881,2362,6292,8863,0233,1263,7654,0621,152920707・学科名変更・デザイン学科新設・定員530名に一般入試方式追加・産業ビジネス学科新設・一般選抜奨学金開学50周年3学部体制へ・東日本大震災・定員500名・推薦選抜奨学金・建築生活環境学科 新設・一般入試 センター試験利用入試 複数学科同時出願・インターネット出願・リーマンショック・宇宙情報科学科 募集停止・定員510名に特集 中期計画で実現する大学の未来苦難の低迷期を経て回復・安定期へ図1 福井工業大学の学部構成(2015年~)図2 志願者数・入学者数の推移電気電子工学科環境・食品科学科機械工学科経営情報学科建築土木工学科デザイン学科スポーツ健康科学科原子力技術応用工学科工学部環境情報学部スポーツ健康科学部

元のページ  ../index.html#31

このブックを見る