カレッジマネジメント220号
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33リクルート カレッジマネジメント220 / Jan. - Feb. 2020とともに、その中で、特にKGI(Key Goal Indicators、目標達成指標)を設定して「数値目標」に基づく検証を組み込んでいることだ。第2次中期経営計画では、学校種ごとに中期計画は策定していたが、戦略分野は全て同じであり、数値目標も明確でなかった。その反省を踏まえ、第3次では大学・学校・法人本部それぞれで戦略分野を定め、例えば大学であれば図4に見るような9分野が設定されている(学校は6分野、法人本部は3分野)。さらに、各戦略分野が複数の行動目標に細分化され、各行動目標に複数のKGIが設定されるという作りになっている。例えば、「教育の深化」を謳う戦略分野1には、KGIとして「能動的な学習ができる講義において100%導入」「学修環境整備(ICT化)100%」といった数値目標が並ぶ。こうして設定されたKGIに基づいて年に1回各学科・各課が検証を行い、その結果は報告書にまとめられることになる。それは、大学であれば学長を議長とする「大学運営協議会」に上げ、さらに最終的には法人の「理事会」に上げていく仕組みが整備されている。第3次が始まってまだ1年経っていないこともあり、ボトムアップで策定した数値目標に基づく初の中期計画がどう機能していくかは、今後注視していきたいと掛下学長は語る。ただ、数値目標の設定自体が今回初めてだったこともあり、KGIそのものに設定上・達成上の問題がある場合には柔軟に見直しながらやっていくことにしているという。掛下学長の言葉を借りれば、福井工大は小さいけどピリッとした、特徴のある大学だ。近年の「総合大学」化を基盤に、文系を含む基礎学問を扱う教育研究機関として、福井県や北陸地域がうまく回るよう人材育成を推進していきたいと学長はいう。基本理念に「すべてを学生・生徒のために」を掲げ、教育第一主義を標榜してきた福井工大の教育は一定の成果を上げてきていると掛下学長は見る。例えば、先述の高就職率が達成できているのは、学内で500社が参加する企業研究会を開催し、学生一人ひとりに教職員が付き添うような形でケアしているからだ。さらに、2016年度にはタイとベトナムで現地進出している地元企業等と協力し、学生が3週間海外でインターンシップを通して就業経験を獲得し、文化や英語を学ぶプログラムも開始した。こうした取り組みを踏まえ、「小さくまとまっていて面倒見のいい貢献度No.1の大学と誇っていいのではないか」と掛下学長は自信を覗かせる。そんな教育力を前提に、掛下学長は、次のステップとしてオンリーワンの研究活動と産学連携を構想・展開し、学生に福井工業大学に来たいと思ってもらえるようにしたいと語る。例えば、2019年4月に立ち上げたAI&IoTセンターがある。福井での導入はAIが1%、IoTは7%にとどまる現状を踏まえ、知の拠点として人材育成や地域活性化に貢献していきたいと学長は語る。もう一つは、地域社会の学習ニーズを踏まえたリカレント教育だ。デザインや経営等の分野でも展開できるのではないかと期待を寄せる。掛下学長が思い描く今後の大学像は、のびのびと研究できる体制、企業が自由に出入りできる、地域に開かれ、地域に還元していける大学にすることだ。それを通して、人材育成、研究、そして地域連携で貢献していきたいという。確かに、これらの種々の取り組みは第3次中期計画において網羅されている。だとすれば、福井工大の当面の成否は、当の中期計画を単なる作文に終わらせず、実質的に展開できるか否かにかかっているはずだ。数年後また福井工大を訪ねてお話を伺ってみたい。(杉本和弘 東北大学高度教養教育・学生支援機構教授)特集 中期計画で実現する大学の未来オンリーワンの魅力作り図4 第3次中期計画における福井工大の9つの戦略分野核となる3つの深化核を強化させる4つの戦略外部アピールを強化する2つの戦略1教育の深化2研究の深化3地域連携の深化5グローバル化の推進6中高大連携の推進7大学院教育の充実4学生支援の充実9質保証と情報公開8戦略的な広報
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