カレッジマネジメント220号
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35リクルート カレッジマネジメント220 / Jan. - Feb. 2020特集 中期計画で実現する大学の未来る。そのなかでも、特に中期計画が成果を上げている大学に共通する要因は何か、というのが今回の調査研究の最重要ポイントである。その要因を分析したところ、以下の6点がポイントではないかという結論にいたった。まず、前提として重要なのは、改めて大学のミッションを確認し、将来に向けて個性や強みを明確化して、本学はどのような価値を提供していくのかを議論することである。そのためには、議論をするに足る十分な情報収集・分析が必要である。その際に重要となるのが将来の環境分析、そして過去の中期計画の振り返り、学内に蓄積された情報等の分析である。次に重要なのは、教職員の当事者意識の醸成である。これが成否のカギを握ると言っても過言ではない。そのためには、プロジェクト等の推進体制の組み方、経過報告、学内外の意見収集といった策定に向けてのプロセスを考える必要がある。その際、中期計画と各組織や個人の目標、行動とどのようにリンクさせるかがポイントとなる。そして、中期計画をいかに、教職員に共有・浸透させていくかである。誰かが作った計画を“やらされる”のではなく、自分事化して当事者意識を持って“主体的”に推進していることが、中期計画の成功に向けた大きな要因となる。中期計画を絵に描いた餅にしないためには、ここが重要である。さらに、中期計画の検証プロセスを策定時に組み込んでおくことである。変化の激しい時代のなかで、一度策定した中期計画を見直さないということはあり得ない。見直しは必然と考え、うまく進んでいない項目をそのままにしないためにも、検証のプロセスの中に、見直しも含めた組織全体としての工程表を作成しておくことが、中期計画を実質化するためのポイントとなる。最後に、中期計画の今後に向けた残された課題は、社会への公開である。それは社会に対する説明責任を果たす、ということだけではない。今回の調査では、社会一般に中期計画を公表・説明している大学ほど、教職員への浸透度も高くなっていることが分かった。大学の現状や目指すべき姿や取り組みを分かりやすく社会に説明するためには、ポイントを明確にしなければならず、それは学内の教職員の理解促進にも効果的であるように思われる。また、学外の視点や社会からのフィードバックを計画に反映することも、重要なポイントとなってくる。私立学校法で義務化されたからではなく、全学を挙げて、将来環境を予測し、いかに教職員の当事者意識を醸成しながら、中期計画を自分事化できるか、これが中期計画に向けた成功のポイントである。

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