カレッジマネジメント220号
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36リクルート カレッジマネジメント220 / Jan. - Feb. 2020まず、高大接続改革全体を時系列で俯瞰しよう。2011年11月中央教育審議会(以下、中教審)初等中等教育分科会に高等学校教育部会が設置され、高校教育の在り方と大学教育との接続が20年ぶりに議論された。そして、今後の予測不可能な社会を支える人材育成に必要な教育を新たに設計する観点から、2012年8月「大学入学者選抜の改善をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について」が中教審に諮問された。2013年10月には、官邸に設置された教育再生実行会議「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」(第四次提言)において、「到達度テスト(仮称)」の基礎レベル、発展レベルの2つが提言された。その後、2014年12月の中教審答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」を踏まえ、2015年1月16日に策定された「高大接続改革実行プラン」に基づき、新たに高大接続システム改革会議が組織され、大学入学者選抜については以下3点が議論された(初回配布資料「検討事項」より)。①高等学校基礎学力テスト(現・高校生のための学びの基礎診断)及び大学入学希望者学力評価テスト(現・大学入学共通テスト)の在り方について②個別選抜改革の推進について③多様な学習活動・学修成果の評価の在り方についてこの時の論点が現状でも変わらず議論の的になっているわけだが、当然議論はより各論に、より現場運用ベースになりつつある。2017年3月には2022年度より年次進行で実施される高校の新たな学習指導要領が告示された。その目玉は「探究」。自分で課題を設定し、解決方法の情報収集・整理分析・まとめ表現までを1つのサイクルとした、新たな学習プロセスといわれる。こうした活動を経た高校生が本格的に入学してくるのは2025年度以降。大学は教育の質保証や学修成果の可視化のみならず、社会変化を背景にした高校の変化を受け止め、その能力をさらに伸ばす教育を提供するために、抜本的な教育の見直しを迫られている。また、学力の3要素評価に合わせた共通テスト改革、個別大学選抜のルール変更等も決定した。以上の経緯を踏まえ、今後の高校と入学者選抜に関する変化を時系列でまとめたのが図表1、入試に関する変化をまとめたのが図表2である。本稿は「入学者選抜改革」の「個別選抜」の現状をリポートするものだが、個別入試改革に大きく影響する大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の概要についても触れておきたい。共通テストは、センター試験と同様に1月の中下旬の2日間で実施される。初回実施は2021年1月16日(土)・17日(日)で、センター試験と同じ6教科30科目が出題される。詳細を規定する大学入学共通テスト実施大綱が2019年6月4日に通知されている。共通テストの目的は、高校段階の基礎的な学習の達成の程度を判定し、大学教育を受けるために必要な能力を把握することだ。大学入試センターが示した問題作成の基本方針は、「知識の理解の質を問う問題や、思考力、判断力、表現力を発揮して解くことが求められる問題を重Chapter1改革の全容整理入学者選抜改革の今鹿島 梓 カレッジマネジメント編集部本原稿執筆中の10月末から12月にかけて大学入学者選抜改革に関してのニュースが嵐のように吹き荒れた。2021年度入学者選抜の各大学方針公表状況、英語外部資格検定試験の是非を巡る各所の意見、大学入試英語成績提供システム導入に当たっての共通ID発行、遂には発行開始日に公表された2020年度のシステム利用見送り。そして白紙撤回となった記述式導入。未だ混迷を極めるこの改革の最新情報をレポートする(2019年12月18日現在)。高校の変化を入試で評価し受け入れる大学の教育を改革する学力の3要素評価と英語4技能に対応する趣旨の共通テスト改革

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