カレッジマネジメント220号
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42リクルート カレッジマネジメント220 / Jan. - Feb. 2020のか。改革はゴールではなく、その後の検証が必要なのは言うまでもないが、従来入試を学力の3要素評価に転換したことにより、新たな課題やチューニ入試を改革した後はどうなっているングの必要が出てくるであろうことは想像に難くない。先行する大学ではどのように検証が行われているのだろうか。3つの事例をご紹介したい。Chapter4これまでの入試改革の成果をどう検証するか中退率低減と学部・学科マッチングに貢献する育成型入試事例 ③九州産業大学九州産業大学(以下、九産大)の「育成型入試」は、もともと大学経営上の重点テーマであった中退率の低減を主目的として導入されたものである(小誌ウェブ連載「高大接続の入学者選抜」参照)。中退は「進路変更」「経済的理由」等避けられない理由の場合もあるが、最も問題なのは学部・学科の教育とアンマッチを起こしたり、成績不振が出席不振につながって中退するケースだ。九産大が入試改革により改善しようとしたのはこの中退パターンである。選抜型から育成型への変換を謳い、受験前からの育成プログラムを通して大学で学ぶ目的や意欲を醸成し、学ぶ姿勢を丁寧に育成する。今年で3年目を迎えたその成果について、学生係長でありKSUアドミッションオフィサーでもある一ノ瀬 大一氏は、「当初の目的だった中退率については大幅な改善を実現しました」と笑顔で話す。多様なエビデンスで成果検証を行っているが、懸念の中退率については図表8に示す通り。育成型入試を導入する以前と導入した2018年の値を比較して大きく改善していること(全体で2.8%→1.5%、AOは6.4%→2.8%)が、この改革の有用性を示す証左となろう。そもそも九産大では、中退率の低減に必要な要素を、①意欲、②基礎学力、③学部・学科とのマッチングの3つに定め、その3つを強化するための入試育成プロセスを設計している(図表9参照)。なかでも高校生の可能性を広げる対話相手としてコーチングスキルを持つアドミッションオフィサーを育成する、最後に面談結果を高校にフィードバックし、進路指導に貢献する等は特徴的なプロセスだ。「我々は教育を起点に入試を設計しています」と一ノ瀬氏は言う。「本学の教育に対する期待値や意欲の高い学生を確保することが第一。そのためには高校生が普段の大学を確認するWCV(Weekday Campus Visit)、対話により自己省察を深める面談、進路指導の先生方に資する体制等が必要だと考えた。高校側からも、生徒の育成について高校と大学が共に考えるこのステップこそが高大接続だという声を多くいただいています」。この言葉からは、高校現場で大学の教育・研究を深く理解した進路指導を行うことが如何に困難かを暗示しているように思う。高大接続という文脈で大学がそうした状況に対して何ができるのか。恐らく求められているのは単なる出前授業等に止まらない、より実質的な連携なのではないだろうか。※大学より提供※大学提供資料をもとに編集部作成全体AO付属校指定校推薦一般センター留学生備考2016年2.6%5.1%3.3%2.0%2.5%1.9%2.2%3.1%2017年2.8%6.4%2.8%3.0%3.1%1.5%0.6%6.6%2018年1.5%2.8%0.8%1.4%1.9%1.2%1.5%1.3%育成型入試導入図表8 九産大 1年次中退率(入試区分別)図表9 九産大育成型入試フローチャート育成プログラム①育成プログラム登録②WCV・WEB模擬講義受講③②受講後、レポート提出④KSUアドミッションオフィサーとの面談申込⑤KSUアドミッションオフィサーとの面談⑥面談結果を高等学校へフィードバック育成型入試⑦育成型入試 出願⑧育成型入試 試験(学部面接・基礎テスト等)⑨合格発表入学前教育・初年次教育⑩入学前教育⑪初年次教育国がではなく本学が何を実現したいのかという視点がなければ検証は難しい

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