カレッジマネジメント221号
13/58

13リクルート カレッジマネジメント221 / Mar. - Apr. 2020化に向けて、学修目標と授業科目の関係性を可視化するだけでは不十分であり、エキスパート・ジャッジメントの涵養を目的とした研修を大学教員個人・集団を対象に継続的に実施していくことが不可欠であることを示唆している。組織学習論の観点から、一時点における大学教員個人・集団の変容を、永続的な組織変容に結びつけていくためには、個人・集団に変容をもたらした取り組みを、組織の日々の定型業務としてルーチン化し、制度化していくことが重要とされている。制度化された仕組みが繰り返し運用される過程で、組織を構成するメンバー一人ひとりの価値観に深く埋め込まれていくからである。このことは、九州大学カリキュラム・マップが、学生を含む組織構成員によって、日々の定型業務のなかで繰り返し活用される仕組みを構築することが、エキスパート・ジャッジメントの涵養を目的とした研修を実施することと同様に重要であることを示唆している。こうした観点から、カリキュラム・マップとシラバスと学務情報を連結したシステムを、全学的学修支援システム内に開発している(図3)。このシステムでは、個々の学生が履修するカリキュラム・マップを入口に、「履修ページ」では授業科目のアイコンをクリックすると該当するシラバスが表示され、学位プログラムの学修目標と授業科目の到達目標の対応関係を簡易に確認することができる。また「成績評価ページ」では、各授業科目の成績評価が色わけして表示され、学修目標の達成度の状況を視覚的に捉えることができる。学生と教職員が、学修目標と授業科目の関係性、及び学修状況を俯瞰することのできるシステムを共有し、学びの振り返りや展望について日々対話できるように環境を整えることで、学修目標に基づく教学マネジメントを推進する教育文化を構築することを目指している。教学マネジメントの実質化に向けた九州大学の取り組みは、始まったばかりである。しかしながら、その土台となっているのは20年前から蓄積されてきた地道な取り組みであり、試みを成功させるために、さらに多くの継続的な取り組みが求められる。「学修者本位の教育への転換」が、いかに時間のかかる組織変容を目指す取り組みであるのか、その課題の大きさに愕然とする。性急な成果を求めることなく、粘り強く取り組んでいきたい。知識・理解の実践的場面での活用《工学実践》新しい知見の創出《工学デザイン》知識・理解の応用《工学分析・解析》知識・理解の修得《工学基礎・工学専門》主体的な学び・協働《工学ジェネリック・スキル》コミュニケーション・チームワーク1年生学修目標2年生3年生4年生修士博士出典 Anderson, L.W. & Krathwohl, D.R. eds. 2001学修目標達成度調査⑤学修目標達成度調査④学修目標達成度調査③学修目標達成度調査②学修目標達成度調査①熱力学伝熱学内燃機関熱エネルギー変換教育課程の区分Tuning AHELO参照基準に基づいて学修目標の妥当性を説明専門科目専門科目専門基礎科目導入・基礎発展統合展開基幹教育科目学科教務委員会機関別内部質保証組織シラバス(「伝熱学」)【機械工学プログラムの学修目標 】B-5. 物質の状態変化、熱と仕事の関係及び熱移動現象の理論を理解し、エネルギー変換の仕組みを説明できる。C-1-2. 機械に関わる現象をモデリングし、解析できる。D-2. 機械工学を含めた自然科学の方法をベースにして論理的思考ができる。【「伝熱学」の到達目標】・ 熱移動の三形態のなかで最も基本となる定常熱伝導、及び最も重要な概念である熱収支について学び、熱伝導のみに支配される簡単な伝熱問題が解けるようになる。・ 対流伝熱の基礎についても学ぶ。組織変容の要件〜日々の定型業務として制度化〜教学マネジメントの実質化には継続的な取り組みが重要図3 九州大学カリキュラム・マップとシラバスと学務情報の連結システム特集 教学マネジメント

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る