カレッジマネジメント221号
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15前者については、教学IRが学修成果をはじめとしたデータの収集・分析(ベンチマークを含む)を中心に、教学マネジメントを支える基盤的な役割を果たすことが期待されることから、学長・副学長等大学全体のマネジメント層が教学IRの重要性や果たすべき役割について理解するとともに、学内で教学IR活動を行ううえで必要な体制、仕組み、情報環境等の整備を求めている。また、教学IR部門が学内の様々な学部・部署から円滑にデータを収集し、適確な分析を行えるよう、学長のリーダーシップの下で教学IR部門に必要な権限を付与したり、部局を超えてデータを円滑に収集することを可能とする規定やデータの適切な取り扱いに関する学内規定を整備したりして、教学IRを実施していくための運用の確立も同様に重要であるとしている。後者については、教学IRに関わる専門スタッフが不足していることにより、その機能が十分果たせていない大学も存在することから、外部の機関の活用や大学間連携を通じて、教学IRのみならず専門スタッフの育成を活性化するとともに、教学IRに関わる事務を共同処理することが期待されるとしている。加えて、教学マネジメントを支えるもう一つの基盤として「FD・SDの高度化」が位置付けられている。教学IR同様、学修者本位の教育を実現するという目的で行われるFD・SDにおいては、教学IRを通じて収集したデータの分析結果を活用しながら、多くの教職員の参画と協力を要するため、双方とも教学マネジメントの基盤として捉え、実際に教育活動を改善していく重要な活動として理解する必要があるとしている。従って、教学IR体制の確立のみならず、FD・SDの高度化と併せて対応していくことが求められていることに留意する必要がある。以上、指針において、教学マネジメントを支える基盤として位置付けられている「教学IR体制の確立」に必要とされることについて概観してきた。本指針は、学長・副学長、学部長など、教学マネジメントの確立に主たる責任を負う大学マネジメント層を第一ターゲットとして明記したうえで、策定されている。教学IRは、教学改革について大学マネジメント層が正しい判断を行うために必要なデータを収集・分析し、一定の目標達成に資する情報を提供することにあることを踏まえてのことである。故に、教学IR体制の確立においても、大学のマネジメント層が果たすべき役割は大きい。第一の「環境整備」においては、必要な体制や仕組み、情報環境等を整えることに加え、データの収集や取り扱いに係る規定等の策定が挙げられている。第二の「人材育成」については、専門人材が不足している現状からすると、当面、個々の大学のみで対応できることには限界があり、外部の機関の活用や大学間連携が求められている。いずれにしても、学長を中心に、大学マネジメント層がこれらのことを認識し、IRの確立に向けたイニシアティブをとらなければ、従前の状況が進展することは期待できない。リクルート カレッジマネジメント221 / Mar. - Apr. 2020【参考文献】小林雅之・山田礼子(編) (2016)、『大学のIR 意思決定支援のための情報収集と分析』慶應義塾大学大学出版会.橋本智也;白石哲也(2019)、「大学におけるIRの実態に関するアンケートの調査報告-自由記述に見られた困難・活動内容-」、大学評価コンソーシアム情報誌「大学評価とIR」第10号、pp.16-10.文部科学省高等教育局大学振興課大学改革推進室(2019)、「平成28年度の大学における教育内容等の改革状況について(概要)」学長を中心としたマネジメント層がIR確立のイニシアティブを執行部IR担当者担当部署学内構成員全員24.826.720.318.614.398.25.014.793.68.511.193.76.96.292.84.5財務データ教員データ授業評価データ学務データ図1 データアクセスへの権限(%)特集 教学マネジメント

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