カレッジマネジメント221号
16/58
16平成30年11月、中央教育審議会は、「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」を答申した。同答申では、高等教育改革の実現すべき方向性として、「学修者本位の教育」「個々人の可能性を最大限に伸長する教育」の実現を謳っている。一方で、大学教育の質保証については、これまで多くの取り組みが進められてきたものの、改善に真剣に取り組む大学と改善の努力が不十分な大学とに二極化しているという指摘もあり、大学全体として十分な信頼が得られているとは言い難いとの認識を示した。同答申において、各大学の教学面での改善・改革に係る取り組みを促していくために、各大学における取り組みに際してどのような点に留意し充実を図っていくべきか等を網羅的にまとめた教学マネジメントに係る指針を作成し、各大学へ示すこととされた。このため、当該指針の作成を目的に、中央教育審議会大学分科会の下に教学マネジメント特別委員会が設けられ、大学内外の多様な委員により、1年間にわたって充実した議論が行われた。教学マネジメント指針においては、同答申の基本的な方向性は踏まえつつも、指針全体として、「学修者本位の教育」という観点の重要性が特に強調されている。以下、本指針の概要について言及する。【総論】今後到来する予測困難な時代にあって、卒業後も含めて常に学び続けていかなければならない学生自身が、・目標を明確に意識しつつ主体的に学修に取り組むこと・その成果を自ら適切に評価し、さらに必要な学びに踏み出していくことができるような「自律的な学修者」となることが求められている。このことを前提として、各大学には、既存のシステムを前提とした「供給者目線」を脱却し、学位を与える課程(学位プログラム)が、学生が必要な資質・能力を身につける観点から最適化されているかという「学修者目線」で教育を捉え直すという根本的かつ包括的な変化が求められている。大学教育が学修者本位の観点から十分な効果を上げることができるようにするためには、教学マネジメント(大学がその教育目的を達成するために行う管理運営)という考え方を重視していく必要がある。教学マネジメント指針は、三つの方針(特に「卒業認定・学位授与の方針」及び「教育課程編成・実施の方針」)に基づき、「学修者本位の教育」の実現を図るための教育改善に取り組みつつ、社会に対する説明責任を果たしていく大学運営、すなわち教学マネジメントがシステムとして確立した大学運営のあり方を示すことにより、教学マネジメントの確立に向けた各大学の真剣な検討と取り組みを促す契機とすることを目的として作成されている。教学マネジメントは、各大学が自らの理念を踏まえ、その責任において、本来持っている組織としての力を十分発揮しつつ、それぞれの実情に合致した形で構築すべきものである。また、個々の教育改善に関する取り組みを別個に独立したもリクルート カレッジマネジメント221 / Mar. - Apr. 2020寄 稿1. 教学マネジメント指針策定の経緯2. 教学マネジメント指針の概要文部科学省 高等教育局大学振興課大学改革推進室長平野博紀教学マネジメント指針──策定の狙いと要点
元のページ
../index.html#16