カレッジマネジメント221号
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24日本福祉大学は、1953年に中部社会事業短期大学として名古屋市に開学し、2013年に創立60周年を迎えた。1957年には4年制の日本福祉大学に改組し、日本初の社会福祉という名称の学部を有する大学となった。1983年には知多半島の美浜町に、総合移転して現在に至る。この間、当初からの社会福祉学部に加えて、経済学部、子ども発達学部(2020年4月教育・心理学部に名称変更予定)、国際福祉開発学部、健康科学部、看護学部、スポーツ科学部、通信制の福祉経営学部と拡大を続け、現在、通学課程で約5700人、通信教育課程を含めれば約1万3000人を擁するまでになった。キャンパスは、美浜以外に、半田、東海、名古屋と分散している。興味深いのは、どの学部でも福祉と関連する学習を重視していることである。例えば、一見、福祉との関連がないような経済学部では、地域経済コースと医療・福祉経営コースの2つのコースを設置しており、医療・福祉経営コースでは医療機関や福祉施設で活躍する人材育成をミッションの一つに掲げている。2020年4月から始まる教育・心理学部は、子ども発達学科と心理学科の2学科から構成されるが、子ども発達学科は、保育・幼児教育専修、学校教育コース、特別支援教育コースと3つの課程が置かれる。このうち、特別支援教育コースは、文字通り特別支援教育に精通した専門家の育成を目指しているが、私立大学でこの領域に特化した課程を持つところは少ない。スポーツ科学部では、障害者スポーツを学習の主要な柱に据え、特別支援学校教諭免許状が取得できる教育課程を編成しているが、これもあまり他に例を見ない。日本福祉大学が「ふくしの総合大学」と称される所以はここにある。なぜ、「福祉」ではなく「ふくし」と平仮名が用いられるのか。それは、どちらかといえば制度による保障に限定されがちな「福祉」に対して、それを包含し、全ての人々の「『ふ』つうの、『く』らしの、『し』あわせ」を追求しようとする意味が込められている。各学部での福祉関連の学習も、この意味での「ふくし」を目指しているのである。ちなみに、この「ふくしの総合大学」は、創立60周年を迎えた2013年の翌14年に商標登録されている。こうした教育の特色をさらに明瞭なものにし、学生が学修の意義を認識し、学修の動機付けを高め、主体的・積極的になるべく導入したのが、「学修到達レポート」である。これは日本福祉大学版ディプロマ・サプリメントである。ディプロマ・サプリメントとは、言うまでもなく、欧州高等教育圏の構築を推進するボローニャ・プロセスのもとで進められている、学生個々人の取得した学位や資格の内容についての説明書である。共通の様式により作成するため欧州圏域のどの機関で学んでも、取得した学位・資格の相互比較が可能になり、高等教育の質の保証の一助となっている。日本福祉大学では、「学修到達レポート」によって学修成果を可視化し、卒業時の質保証を行っているのだが、具体的にどのような情報が記載されているのか、図表1から見ていこう。ここで特徴的なことは、学部のディプロマ・ポリリクルート カレッジマネジメント221 / Mar. - Apr. 2020児玉善郎 学長日本福祉大学版ディプロマ・サプリメントによる質保証日本福祉大学C A S E2「ふくし」の総合大学日本福祉大学版ディプロマ・サプリメントの導入

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