カレッジマネジメント221号
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26リクルート カレッジマネジメント221 / Mar. - Apr. 2020課の科目とすることもありうる。こうした縦横に張り巡らされた教育の質保証の仕組みの上に、「統合学生カルテ」があり、「統合学生カルテ」にもとづき作成された「学修到達レポート」が、学修の質を「見える化」しているのである。しかしながら、なぜ、正課の学修に加えて、学生生活やキャリア形成を含んだ統合カルテにするのか。なぜ、キャリアディベロップメントや基礎リテラシーを、正課の学修に付加することを考えているのか。この疑問に対して、教務部長と全学教育センター長を兼務し、この事業の実質的な担当責任者である中村信次学長補佐は、次のように語られる。「うちの学生はまじめで素直ですが、中には自己肯定感があまり高くない者が見受けられます。また、やる気はあるのですが、基礎的なリテラシーが確実に身についていない者もいます。これらの者が、自信を持って仕事ができるようになるためには、基礎的なリテラシーを身につけ、多様な活動をし、就職に際して大学での活動を自分の言葉で説明できるようになることが必要なのです。縦軸、横軸の質保証の仕組みは、そのためにあるのです」。手厚い教育である。2018年度からの社会福祉学部と子ども発達学部での導入を皮切りに、全学部への導入を順次進めているそうだ。これらを稼働させるためには、推進する組織とともに、全学的な合意形成も必要になる。それはどのように作られているのか。図表3に見られるように、まず、「AP事業推進本部」が2016年に設置された。上述の質保証の取り組みは、当該年度にAP事業(文部科学省 大学教育再生加速プログラム「高大接続改革推進事業」テーマV:卒業時における質保証の取り組みの強化)に採択されたものであり、全学的な組織体制の構築が要件である。推進本部には、本部長に就職担当副学長を据え、教部部長、上記2学部の学部長から構成されている。この推進本部のもとに、「AP事業推進委員会」が置かれる。この委員会は、教務部長が委員長となり、学部の教務委員、教職課程センター長、社会福祉実習教育研究センター長、就職キャリア開発委員に加えて、キャリア形成を担う教職員や学修アドバイザーなどから構成されている。実質的に事業を推進するのがこの委員会であり、委員会の中に、いくつかのワーキング・グループが組織化され、事業の具体化を図っている。また、全学教育センターは、既存組織として、この事業を支える役割を果たしており、事業推進のために新卒業時の質保証全学レベルの3ポリシー建学の精神学則第2条 etc.全学レベルの3ポリシー学士課程教育全体(正課+正課外)の評価指標(学生の到達度)・アセスメントポリシーの設定エンロールメントマネジメント実効性の高い学修支援全学および各学部が目指す養成人材の輩出= ディプロマ・ポリシー の達成 日本福祉大学版 =ディプロマ・サプリメントの発行基礎リテラシー養成オフィス基礎リテラシー養成プログラムシステムへの評価蓄積キャリアディベロップメントプログラム(CDP)専門職養成支援プログラム事業の推進支援協働質保証に関するFD・SDの実施・学修アドバイザー配置・全学教育センター 学修管理・支援部門設置・学部の参画と協働リメディアル教育プログラムキャリア・専門職養成支援オフィスキャリア形成支援を含む包括的な学修支援事業の推進学力低・中位層のBottom up学力上位層のPull up学生部就職部学生生活キャリア形成支援就職支援学生の学修アウトカムを評価学修管理・支援の組織基盤形成教職員AP事業推進委員会支援協働学部3つのポリシー学部正課教育学位記+正課の学修成果+正課外教育学修到達レポート統合学生カルテ学修成果可視化システム(Portfolio System)の構築正課以外の学修成果図表2 大学教育再生加速プログラム(AP) テーマV:卒業時における質保証の取り組みの強化 全体図質保証を稼働させる仕組み

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