カレッジマネジメント221号
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27リクルート カレッジマネジメント221 / Mar. - Apr. 2020たに「学修管理・支援部門」という担当部署を設置した。実は、「AP事業推進委員会」のメンバーは、「全学教務委員会」のメンバーと重なっており、毎月1回開催される全学教務委員会においても、AP事業の進捗状況を確認し、今後の方向について議論するため、必然的に事業の全学的な取り組みが可能となる。この体制でも、全学的な周知は可能ではあるが、全教員への関心事になるとは限らない。これまで日本福祉大学では、年に2回、本部のある美浜キャンパスに240名ほどの全教員を集めての全学部合同教授会を開催してきた。キャンパスが離れているために、日常的には接することのない教員間の意思疎通を高めるための工夫である。この機会を利用してAP事業の取組状況を報告し、学生の学修成果を可視化することで質の保証をしていくことに対して、教員の認知を高めようとしている。学生の教育に従事する教員個々人の意識化、それにもとづく実践が不可欠である。日本福祉大学では、これまでに文部科学省の競争的資金を数多く獲得し、それをもとに教育の充実、質保証を図ってきた。例えば、2009年度に大学教育・学生支援事業に採択され、「日本福祉大学スタンダード」として「四つの力」(見据える力、共感する力、関わる力、伝える力)を全学共通の人材育成目標として設定して全学教育の改革を実施した。これはその後の3ポリシーの設定において、全学共有のディプロマ・ポリシーとされている。また、COC事業の2014年度の採択によって、「ふくし・マイスター」の認定制度を設定した。これは、各学部及び全学教育センターの「地域志向科目」を10科目20単位以上修得し、1年から4年まで毎年リフレクションを行った学生を卒業時にふくし・マイスターとして認定するものである。地域に出て「ふくし」の現場を知るとともに、大学で得た専門知識をもとに地域の課題解決に取り組むことのできる学生の育成を目指すものである。こうした取り組みをもとに、全学のディプロマ・ポリシーには、「四つの力」に加えて「地域社会に貢献する力」が掲げられた。もともと地域貢献は大学のミッションであり、それを「ふくし・マイスター」として形にした。これらの取り組みが収斂することで、「学修到達レポート」と「統合学生カルテ」による質保証に至ったといえよう。AP事業によるこの取り組みは、2018年の開始から2年。学生は、「統合学生カルテ」にディプロマ・ポリシーのレーダーチャートが示されることで、ディプロマ・ポリシーを意識するようになり、教員間への浸透の度合いも認識も徐々に高まるなど、手応えは感じられるものの、いくつかの課題も認識されている。1つは、「学修到達レポート」に対する学生を採用する側の認知度を高めることである。福祉施設などに「学修到達レポート」の存在を紹介するなど努力は重ねているが、学生の成績をあまり重視しない日本の労働市場の慣行が壁となっている。もう1つは、学生の学修成果を可視化するこれらの取り組みを、どのように教育プログラムにフィードバックするかである。そのためにも多くの教員の意識化を進めねばならない。恐らく後者の課題は、さほど困難ではない。問題は、前者である。大学の教育改革も、その一環としての学生の学修成果の可視化も、なかなか大学外部の関心を引かない。しかし、「日福大を出た専門職〇〇士」としての認知を高めるためには、地道な努力しかない。やや時間はかかるかもしれないが。(吉田 文 早稲田大学教授)図表3 学内の推進体制の全体図大学改革委員会(委員長=学長)学長副学長教務部長取組推進の要全学教育センター長全学教育センター所属教員全学×学部の協働・指標等設定・プログラム開発FD・SDの推進支援学長による取組全体の統括取り組みの推進エンジン学修アドバイザー担当の学部委員全学教務委員長(兼務)(兼務)全学教育センター学修管理・支援部門学部AP事業推進本部AP事業推進委員会運営・推進体制基礎リテラシー養成オフィスキャリア・専門職養成支援オフィス全学部合同教授会教育の質保証に係る全学的なFDの実施特集 教学マネジメント採用側への周知と教育へのフィードバックが今後の課題
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