カレッジマネジメント221号
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28松本大学松商短期大学部は、長野県松本市に位置する商学科と経営情報学科の2学科から構成される収容定員400名の男女共学の私立短期大学である。1898(明治31)年に松本出身の実業家・教育者である木澤鶴人が近代的商業人の育成を目的に創設した私塾「戊戌学会」に淵源を持つ学校法人松商学園によって、松商学園短期大学として1953年に設置された。創設者が明治初期に慶應義塾に学び、福澤諭吉の精神を受け継いで学校を創設したことから「自主独立」を学園全体の建学の精神としている。2002年に「教育・研究を通じた地域社会への貢献」を目標とする四年制大学として松本大学が設置されるとその併設校として松本大学松商短期大学部となり、地域貢献が基本理念として位置づけられた。松本大学松商短期大学部(以下、松商短大)は、これまで、2003年の特色GPを始め、文部科学省の教育改革のための補助事業に多く採択されてきた。2016年には「大学教育再生加速プログラム(AP):卒業時における質保証の取り組みの強化」に採択され、学習成果の可視化を進めている。学生の学習成果を高める同校の取り組みについて、住吉廣行学長にお話をうかがった。松商短大を含めた松本大学の特徴ある取り組みを一言で表現するキーワードは「地域」である。住吉学長は「学生を伸ばすにはどうすればいいか。学生が学びたいと思わない限り、本物にならない。学びたいという気持ちを持つ学生を作りたい」と学生が自ら学ぼうとする意欲の大切さを強調する。そして、学生自身が本気で「知りたい」と思うような機会やきっかけをどうしたら提供できるか、目の前の学生に対して大学の教員がそれを提供できるかを考えたときに、自分自身を含めて大学の教員にはそれは難しい、と冷静に話す。一方で、「学生はあまりにも社会を知らなすぎる」と学生の現状も冷静に見極める。そのうえで、素粒子物理学を専門とする住吉学長は「物理であれば、宇宙はどうなっているのか、ということが学生の問題意識のきっかけになる。社会科学では、地域のなかで、何でこうやっているのか、どうしてこうなっているのか、ということが学生の問題意識のきっかけになる」と地域の重要性を位置づける。「地域のおじさんやおばさんと接して、話をして、怒られて、学生は学んでいく。地域に出ていった学生は成長の度合いが違う」と地域の人達と関わることが学生自身の学びたいと思う意欲につながることを強調する。しかし、大学の理念として地域貢献を掲げているから、地域との関わりを持つようになったわけではないという。大学と地域との関係について「地域貢献のためにやっているのではなく、学生をどう育てるかという、教育論として地域との関わりを深めている。地域のなかに社会的問題があり、学生がそれに気づく。社会には常に様々な問題はある。それを考えさせてくれたり、学生に分かるように伝えてくれるのが地域」と話し、「普通に生活するなかで、学生に学びたいと思わせるようにしてくれることが地域との連携の理由」とする。大学の教育、学生の成長につなげることが地域と関わる目的なのである。松商短大が2003年に特色GPで採択されたテーマは「多チャンネルを通じて培う地域社会との連携」であった。それリクルート カレッジマネジメント221 / Mar. - Apr. 2020住吉廣行 学長「地域」を通じて学生の学習意欲を学修成果につなげる松本大学松商短期大学部C A S E3学生自身が学びたいと思うための「地域」長野・松本という地域の教育力を大学教育に活かす
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