カレッジマネジメント221号
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30リクルート カレッジマネジメント221 / Mar. - Apr. 2020さんが亡くなった時、その葬儀には多くの学生が自主的に参列したという。叱られることを含め、地域の人達と交流するなかで、学生達が社会性を身につけていったのである。3つ目は、地域のなかでの大学教育の役割を考えさせられたことである。住吉学長がこの大学に赴任した頃、地域の中堅校の高校の先生から「今までは偏差値の高い高校や学生しか相手にしていなかっただろうけど、偏差値での中位層が社会のマジョリティだ。社会のマジョリティを育てられない大学教育は駄目だ」と言われた。地域の中で大学教育の果たす役割、マジョリティをどのように育てるかが重要な視点であると意識したのである。これらの3つの出来事を背景に、何に依拠して、どのように学生を育てるかについて、大学として検討を深め、理論化することで、それが地域の教育力を活かした大学教育の取り組みとして具体化していったのである(図表1)。大学教育と地域の教育力をつなぐ仕組みとして、取り入れた仕組みが「アウトキャンパススタディ」である(図表2)。学校内(イン)での授業・教育活動とつながった学校外の地域での活動を組織的な教育活動として取り入れるようにした。例えば、松本地域にはカーネーション農家が多い。商学・経営学を学ぶなかで、学校内での授業で理論的な内容を学ぶだけでなく、実際の生産者が市場でどのように販売しているのかを学ぶために、学校外の活動(アウト)としてカーネーション農家に行って話を聞く。そこで、その日の相場を見ながらどの市場に持っていくかを決めるという話を聞く。どの市場に卸すかはその日決める、というリアルな取り引きを学生は学ぶことができるのである。地域全体を通じて、大学内(イン)と実社会(アウト)で往還して学ぶ仕組みを取り入れるためには、大学の授業にも現場と結びつくテーマを取り入れていくことが必要となる。アウトキャンパススタディは、大学での教育内容を、地域の具体的な課題に結びつけ、実践的な内容としていくとともに、地域の課題を通じて、学生が学ぶことの意味や目的意識を培っていく双方向的な仕組みとなっている。このような考え方を理論的に整理し、概念化することで学内外に示し、教職員での共通意識を形成するとともに、GP等の各種補助金での採択につなげることで、持続的な教育改革や学習成果につなげてきたのである。また、このような学生達の地域での活動・取り組みは、地域の人達から常に見られており、そのことがさらなる学生の意欲につながっているという。松本地域には多くの地方紙・地域紙・ミニコミ紙があり、学生達の活動はそれらに掲載されて広く紹介されることで、地域の人達に知られているのである。地域の中でも、松本大学・松商短大の様々な活動が知られることで、学生や教員もこのような地域との連携が成果につながっていると実感している。さらに、学生の学習意欲を高め、学習成果を高めるために、松商短大では、柔軟な科目群とするフィールド・ユニット制によるカリキュラムを導入している。フィールド・ユニット制とは、関連科目を入門・基礎・応用・実践にモジュール化したフィールドとして履修することで、修得する知識・能力を明確にするものである。「経理会計」「経済・金融」「情報専門」「経営・法律」「国際コミュニケーション」という基本フィールドに加え、「医療事務」「図書館司書」「福祉」「ブライダル」「ファッション」などの進路選択に対応したフィールドを含めた16のフィールドが設定されている。フィールドを軸に学生が自由に学べるカリキュラムとすることで、学生が自分自身の将来のキャリア選択に合わせた知識・能力の習得を行うことができるようになっている。地域とのつながりだけ図表2 アウトキャンパススタディの概念図具体的な地域との教育カリキュラム「アウトキャンパススタディ」Campus・解決策研究・ディベート・プレゼンテーションOut Campus・解決策実行・企画運営Campus・レポート・卒業研究Out Campus・現場体験・課題発見Campus・教養、基礎知識・事前学習・専門知識フィードバックによる知識活用の必要性と専門知識の認識実社会で知識の検証知識の活用フィードバックによる知識の定着実践力の養成
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